26年には再エネが化石燃料を抜き世界最大の電力源に: IEA予測

記事のポイント


  1. 国際エネルギー機関(IEA)が世界の電力に関する最新レポートを出した
  2. 遅くとも26年に、再エネが石炭火力を抜いて世界最大の電力源になる見通しだ
  3. 世界の電力部門のCO2排出量についても、2026年には減少に転じると予測する

国際エネルギー機関(IEA)はこのほど、世界の電力に関する最新レポート「電力2025中間報告」を公表した。IEAは、遅くとも2026年には、再生可能エネルギーが、石炭火力を抜いて世界最大の電力源になると見込む。また、天候や燃料価格動向次第では2025年中に、そうなり得るとした。世界の電力部門の排出量についても、2026年には減少に転じると予測する。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子、編集協力=植松美海)

遅くとも2026年には再エネが石炭火力を抜いて
世界最大の電力源になる見込みだ

国際エネルギー機関(IEA)の最新レポート「電力2025中間報告」によると、世界の電力需要は、不透明な経済情勢にもかかわらず、2025年、2026年ともに堅調に拡大すると見込む。

レポートでは、再生可能エネルギー(風力、太陽光、水力、バイオエネルギー、地熱)が、天候や燃料価格の動向次第では2025年中に、あるいは遅くとも2026年までには、石炭火力を抜いて世界最大の電力源になるとの見通しを示した。

石炭火力の比率は、過去100年の中で最も低い水準の32%にまで低下する。石炭火力の比率減少を牽引するのが、中国やEUだ。

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その一方で、再エネは世界全体の電力供給の36%を占めると予測する。特に成長を牽引するのが、太陽光発電と風力発電であることは疑う余地もない。

この2つの世界シェアは2005年の1%、2015年の4%から、2024年には15%、2025年には17%となり、2026年にはほぼ20%に上昇するとIEAは見通す。 また2026 年までの世界の電力需要の増加分の9割以上を、これら2つの電力源が満たすことになると予測した。

■電力部門の排出量は2026年に減少に転じる見込み

IEAは、2026 年までに原子力およびガスの発電量も過去最高に達し、それとあわせて中国およびEUが牽引する形で石炭火力発電が減少に転じると予測する。その結果、電力部門の排出量も2025年をピークに、2026年から減少すると見込む。

世界の電力部門の排出量は2024年に、前年から1.2%増加した。その前年の伸び率が1.6%増だったのと比べると、伸び率は鈍化した。観測史上最も暑い1年となった2024年はエアコン使用による電力需要が増えたが、その一方で、再エネの急速な普及が、化石燃料による発電の増加を抑えたことが背景にある。

異常気象の発生や、世界の石炭火力発電の5割超を占める中国の動向によるものの、IEAは2025年の排出量はほぼ横ばいで、2026年には減少に転じると予測した。

地域別では、電力部門の排出量の削減に最も寄与するのが中国で、EUがそれに続く。一方で、石炭火力が拡大するインドや東南アジアでは、引き続き排出量は増える見通しだ。

■見通しに不服の米政権、IEAにも圧力かける

化石燃料の将来は衰退し、風力や太陽光の採用が必要だとの見方を示すIEAの予測は、化石燃料を推進する米トランプ政権の政策と矛盾する。

IEAは、第1次オイルショック後の1974年に、米キッシンジャー国務長官(当時)の提唱で設立されたOECDの枠組み内の自律的な機関だ。現在、IEAはOECD加盟国のうち、日本を含む32か国で構成する。

米紙ポリティコによると、トランプ政権が、「IEAは世界中で化石燃料への投資を妨げている」と主張した。

そして、米国からのIEAに対する支援を打ち切ると圧力をかけ、現在、IEAでナンバー2のポストに就くメアリー・ウォーリック次長を、トランプ大統領の政策に沿った人物に交代させるよう要求していると報じた。

北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

オルタナ輪番編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部、2024年1月からオルタナ副編集長。

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キーワード: #再エネ#脱炭素

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