記事のポイント
- SMBCグループなど金融4社はTNFDに関するコンセプトペーパーを発行した
- 金融機関として企業のネイチャーポジティブへの取り組みを支援する
- 事業会社が自然資本を経営と統合するハードルは依然として高い
三井住友フィナンシャルグループや日本政策投資銀行など金融4社は、合同でTNFDに関するコンセプトペーパーを発行した。生物多様性の損失を食い止め、回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」の実現に向けた要点を整理したものだ。金融機関として、事業会社のTNFDの取り組みを後押しすることが狙いだ。(オルタナ総研フェロー=室井 孝之)
TNFDのコンセプトペーパーを発行したのは、金融4社からなるアライアンス「FANPS」だ。FANPSは、フィナンシャル・アライアンス・フォー・ネイチャーポジティブ・ソリューションズの略称だ。
三井住友フィナンシャルグループ、MS&ADインシュアランスグループホールディングス、日本政策投資銀行、農林中央金庫の4社によって、2023年2月に発足したアライアンスだ。
コンセプトペーパーでは、事業会社のネイチャーポジティブへの移行支援に向け、金融機関の視点から取り組みの要点を整理した。ネイチャーポジティブに資する技術を示した「ソリューションカタログver.2.0」も公開した。金融機関として企業のTNFD対応を一層後押しする。
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FANPSはこれまで、TNFD対応の簡易診断ツールの公開や各種イベント・媒体での情報発信、業界団体などとの対話を通して、国内でのネイチャーポジティブに向けた機運を醸成してきた。
TNFDのフレームワークなどは充実してきた一方、事業会社における本質的な取り組みのハードルは依然として高いと問題意識を持った。
それゆえ、企業経営における戦略策定やリスク管理に自然への依存やインパクトの観点を織り込むことを、金融機関として一層後押しする必要があると考えた。
コンセプトペーパーでは、自然関連リスクの管理やビジネス機会の特定に向けて「4つのコアアプローチ」を示した。アプローチ方法は次の通りだ。
1.経営における「自然関連のリスク・機会」を把握し、自社の「ビジネスモデル」や「バリューチェーン」を中心に据えて考える。
2.企業がどの様に自然に依存し、影響を与え、リスクを抱えているかを理解し、自社の技術がその解決にどう貢献できるかを見極める。
3.自然は、企業、地域、社会全体で共有される資本であり、その価値を守り高めるには、取引先・顧客、業界団体、専門家、行政、金融機関等多様なステークホルダーと協働して行動する。
4.組織横断的かつ継続的な取組を経営戦略に統合していくため、経営層が、自然関連リスク・機会に関するガバナンスを構築し、取組の進捗を監督する。