帝人が胡蝶蘭を回収・再利用、障がい者雇用拡大にも

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記事のポイント


  1. 帝人は枯れた胡蝶蘭を回収し、リユースやリサイクルを行っている
  2. 贈答先での胡蝶蘭の廃棄負担を軽減し、贈答文化をよりサステナブルなものに
  3. 農福連携を軸に障がい者雇用も拡大し、双方にとって心地よい贈答体験へ

胡蝶蘭の贈答は日本の慶弔文化として広く根付いている一方、観賞期間を過ぎた後は廃棄されてしまうのが一般的だ。分別の手間や処分費用から贈られた側の負担になるという課題もある。こうした課題に対して、農福連携で胡蝶蘭の生産・販売を行う帝人ソレイユは、このほど、枯れてしまった胡蝶蘭を回収・分別し、再利用するサービスを開始した。障がい者雇用の拡大にもつながり、贈る側・贈られる側の双方に心地よい贈答体験を提供している。(社会課題ライター・川原莉奈)

枯れてしまった胡蝶蘭を起点として、新たな価値と循環サイクルを生み出す

帝人ソレイユは2019年に設立した帝人の特例子会社(*)だ。千葉県我孫子市の自社農場「ポレポレファーム」で、社員一人ひとりの特性を活かして高品質な胡蝶蘭を生産・販売する。2022年には農林水産省「ノウフクアワード」を受賞するなど、農業と福祉の連携(農福連携)のモデルケースとしても評価されてきた。

2025年9月に開始したサービスでは、他社製品も含め1鉢あたり3300円(税込)で回収・再利用を行い、サステナブルな贈答文化を推進する。障がい者雇用の拡大にもつながり、贈る側・贈られる側双方に心地よい贈答体験を提供する狙いだ。

同社の鈴木崇之取締役社長補佐は、「ハンディキャップと表裏一体の特別な才能を活かすことが高品質の実現には重要だ」と話す。「単なる社会的貢献にとどまらない、事業価値の創出につながっていれば、これほど嬉しいことはない」と力を込めた。

「資源循環」と「障がい者雇用」は一見、別領域のテーマだ。だが鈴木取締役は、サステナビリティという点で重なると言う。

「循環サイクルをハンディキャップのある社員の業務として位置付けることで、障がい者の雇用創出が実現する。お客様にとって枯れた胡蝶蘭を再生産することはちょっとした救いになるかもしれない。そのような資源循環による見えない価値を生み出す主体が、ハンディキャップのある当社の社員たちだ」(同)。

障がい者雇用と環境配慮の両立を進める取り組みとして、今後の展開にも期待が高まる。

 (*)「障害者雇用の促進等に関する法律」に基づき、企業が障がい者雇用を目的に設立する子会社のこと。

kawahara

川原莉奈 (社会課題ライター)

早稲田大学理工学部卒業後、大手自動車関連メーカーで7年間勤務。その後、「全く異なる世界を見てみたい」との思いからフリーランスに転身。ファッション・ライフスタイル系のWebメディアでデスク、エディター、ライターを務める。2023年からは、並行してNPO法人にてWebデザインや広報を担当し、社会課題への関心を深める。ライターとしてのモットーは「複雑なテーマを整理し、シンプルに伝えること」。

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