■「企業の社会的責任」を再考する─「企業の社会対応力」と理解
本書で改めて強調したのは、「企業の社会的責任」の再考です。今、企業経営や組織運営には、「社会対応力」が求められています。

この点は、企業では「企業の社会的責任」(Corporate Social Responsibility)と表現されています。このCSRが本格的に日本に導入された2003年は「CSR元年」といわれました。
しかし、Responsibilityを「(社会的)責任」と訳したことにより、受け身型の最低限守るべき事項という語感が漂います。翻訳というものは難しいのです。この語の本来的な意味は、Responsibility=Response(反応する・対応する)+ability(能力)、つまり「反応(対応)する能力」です。したがって、CSRは社会課題への積極的対応も含めた「社会対応力」として理解すべきです。
「企業の社会的責任」という訳語は語感が狭いので、CSRの訳語を「企業の社会対応力」に改訂して、内容を捉え直していくことを、あらためて提案しました。
■「協創力」が稼ぐ時代の羅針盤
以上により、協働と発信で革新を呼び、利益を生み出す共有価値創造の日本型戦略を示しました。
企業には、新グローバル時代のインバウンド消費・クールジャパン・情報通信技術活用・国際都市東京・地方創生で新たなビジネスチャンスをつかむヒントになるでしょう。自治体・政府には、企業の力を引き出し勝機につなげるヒントになるでしょう。
31年間の行政経験(農林水産省・外務省・環境省)と7年間の企業ビジネス現場の経験を有する著者独自の視点で、企業の社会対応力(CSR)も見直し、「国際的な世間話」ができる人材育成も加えて、利益と社会価値を同時に実現する企業戦略を体系化したものです。
本書が、企業の共有価値創造(CSV)戦略により、社会課題解決と持続可能な企業価値向上を実現する一助となれば幸いです。
◆『協創力が稼ぐ時代―ビジネス思考の日本創生・地方創生―』
(笹谷秀光、ウィズワークス社)
http://www.amazon.co.jp/dp/4904899504