■「協創力が稼ぐ時代」の「ストーリー」
現在の課題解決には企業の力が不可欠です。政府の「まち・ひと・しごと基本方針2015」では「民の知見」(民間の創意工夫)を引き出すとしていますが、筆者は31年間の行政経験の後で、7年間にわたりビジネス現場に身を置きその意味を実感しています。

消費者の共感を得て成功している製品・サービスをよく見ると、本業を生かして、利益と社会価値の同時実現を目指す企業の競争戦略が功を奏しています。その秘訣は、社会課題に真摯に向き合い、社内・社外のさまざまな関係者との連携で気づきを得て、イノベーションにつなげることです。
今や、企業は、本業の中で関係者との「協創」により商機につないでいます。本書でご紹介していく企業事例を見ることにより、読者は、まさに「協創力が稼ぐ時代」を実感でき、「目からうろこが落ちる」と思います。企業の社会対応と聞くと慈善活動と捉える方もいますが、複雑化する課題の解決にこそ、企業の本業による価値創造力が生きるのです。
筆者は、今はストーリーで物事を語る、「ストーリー・テリング」の時代だと思います。それにより読者のみなさんが「気づき」を得られるからです。本書の多くのストーリーは、できるだけ現地視察して現地からの声を生かしました。
例えば、「日本遺産」制度は、歴史的な価値や意義をわかりやすく伝えるストーリー性があり、その魅力を海外にも発信できることを基準として、地域の観光振興につなげるねらいで選定・発表されたものです(文化庁、2015年4月)。今後、地方創生の有力な武器になる制度です。
日本海・若狭湾に面した小浜から京都にサバを運んだ鯖街道を中心とした「海と都をつなぐ若狭の往来文化遺産群~御食国 若狭と鯖街道」(福井県小浜市、若狭町)は、日本遺産の第一弾指定の一つです。小浜市は、イタリア・ミラノ国際博覧会(2015年5~10月開催)に出展しました。日本遺産指定第一弾の面目躍如といった意気込みが感じられます。
■日本型の「共有価値創造戦略」(CSV)「発信型三方よし」