記事のポイント
- 経産省は26年4月から、キャップ&トレード方式の排出量取引制度を導入へ
- 25年12月までには同制度における排出枠の上下限価格を設定する考えだ
- 排出枠の上下限価格はJクレジットやEUなどの排出枠価格を参考に議論する
経産省は年内に排出量取引制度における排出枠の上下限価格を設定する。排出枠の上下限価格は、有識者会合を開き、Jクレジット価格やEUや韓国の排出枠価格を参考に議論する。同制度は2026年4月からEUなどで先行する「キャップ&トレード方式」を導入し、排出原単位(ベンチマーク)の水準を全業界上位50%とする方針だ。(オルタナ輪番編集長=池田真隆)
排出量取引制度では、事業者には、政府が排出枠を無償で割り当てる。事業者は割り当てられた排出枠を超過した場合、超過しなかった事業者と取引することで、超過分を埋め合わせする。取引しても埋め合わせができなかった事業者は、国に負担金を支払う仕組みだ。
政府は年間で10万トン以上のCO2を排出する事業者に同制度への参加を義務付けた。電力や鉄鋼などを中心に300~400社に及ぶ。それらの事業者の温室効果ガス(GHG)排出量を合算すると、国内のGHG排出量の6割に相当する。
経産省は10月17日、4回目の「産業構造審議会 イノベーション・環境分科会 排出量取引制度小委員会」を開いた。同審議会では、割り当て基準となる排出原単位(ベンチマーク)の水準案を示した。
2026年度から始める制度のベンチマークを、全業界「上位50%」とした。この水準を徐々に高めていき、2030年には上位32.5%、10年後の2035年ごろには上位15%にする方針だ。初年度の水準は上位50%なので、約半数の企業が排出枠を購入する必要がある。
経産省としては、同制度を考える上で、省エネ法やEUでの排出量取引制度の実績を参考にした。これらの制度の実績から、10年程度をかけて、上位15%の水準に移行させることが現実的だと考えた。
排出枠は、同制度を通じて取引される。取引の仕組みによって売り手と買い手が異なり、約定価格は市場の需給によって変わる。そのため、価格安定措置として、政府は年内に排出枠の上下限価格を設定する。