記事のポイント
- 政府は排出量取引への一部事業者への参加を義務化する方針だ
- 政府が事業者に排出枠を割り当て、未達の場合は国に負担金を払う
- 排出枠は業界特性などによって決めるが、「公平性」に課題も
政府はこのほど、排出量取引への一部事業者への参加義務化などを盛り込んだGX推進法の改正案を閣議決定した。排出量取引では、対象の事業者に政府が排出枠(キャップ)を無償で割り当て、未達の場合、企業が国に負担金を支払う仕組みだ。一方、排出枠は政府が業界特性などによって決める方針だが、公平性に課題もある。(オルタナ副編集長=池田 真隆)
政府は、経済成長と脱炭素の同時実現を目指すGX(グリーントランフォーメーション)戦略の一環として、2026年度から排出量取引を本格化する。これまでは、参加の義務も罰則もない「プレッジ&レビュー」方式だったが、EUなどが先行して行う「キャップ&トレード」方式に変える。
このほど閣議決定したGX推進法の改正案では、2026年度からCO2の年間排出量が10万トン以上の事業者に排出量取引への参加を義務付けることなどを盛り込んだ。今国会内で成立を目指す。
参加を義務付けた年間で10万トン以上のCO2を排出する事業者は、電力や鉄鋼などを中心に300~400社に及ぶ。それらの事業者の温室効果ガス(GHG)排出量を合算すると、国内のGHG排出量の6割に相当する。
事業者には、政府が排出枠を無償で割り当てる。排出枠については、25年度中に決める予定だ。事業者は割り当てられた排出枠を超過した場合、超過しなかった事業者と取引することで、超過分を埋め合わせする。取引しても埋め合わせができなかった事業者は、国に負担金を支払う。
一方、排出枠の決め方には議論が必要だ。トランジションの進捗具合や業界特性をもとに政府が排出枠を決めるが、脱炭素化技術が確立していない産業だけ特別に緩い排出枠になると日本の温室効果ガス削減目標の達成に向けた削減貢献の「公平性」が欠ける。
■政府が上下限価格を設定するので市場メカニズムは働かない
■専門家「低すぎる上限価格では削減が進まないリスクも」
■価格低迷時には、GX推進機構による排出枠の買支えも