記事のポイント
- EUや米国は企業の温室効果ガス排出量の開示を義務付ける方向で動いてきた
- だが、「『表現の自由』に反する」など、その動きを押し戻す流れも出てきた
- 一方、日本はプライム企業にGHG排出量の開示を義務化する方針だ
各国の気候変動政策が揺れている。EUや米国の規制当局は企業の温室効果ガス(GHG)排出量の開示を義務付ける方向で動くが、「開示が困難」「『表現の自由』に反する」などとして、その動きを押し戻す可能性も出てきた。一方、日本はプライム企業にGHG排出量の開示を義務化する方針だ。(オルタナ副編集長・池田 真隆)
米証券取引委員会(SEC)は3月6日、米国の上場企業にGHG排出量の開示を義務化する規則を採択した。米国に上場する外国企業も対象で、日本企業にも影響が出る。
だが、この規則が義務化したのは、スコープ1と2のGHG排出量だけで、サプライチェーン全体を含めたスコープ3(原料調達から使用・廃棄まで)の開示は義務化していない。
スコープ3は企業のGHG排出量のうち、7-9割を占める。サプライヤーの排出量なので、削減はもちろん、現状の排出量を把握することすら進んでいなかった。
当初SECが提案した規則案では、スコープ3の開示は義務化する方針だった。EUは23年1月に発行した「CSRD(企業サステナビリティ報告指令)」で、企業にスコープ3を含めたGHG排出量の開示だけでなく、第三者保証を義務付けていた。
この領域で遅れを取らないように、SECも考えていた。だが、産業界からの反発を受けて、後退した形だ。
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