記事のポイント
- 英シンクタンクは、2025年第3四半期のグローバル電力レポートを公表した
- 2025年は9カ月間、電力需要が拡大する中で、増加分をすべて再エネがカバーした
- 電力需要が大幅に拡大する中で、化石燃料が伸びない「歴史的転換点」に
英・気候シンクタンクのエンバーは11月13日、2025年1月から9月までの9カ月間の「グローバル電力レポート」を公開した。それによると、2025年は電力需要が拡大する中で、需要増加分をすべて再エネで賄った。2025年通年での見通しについても、電力需要が大幅に拡大する中で、再エネの成長によって化石燃料による発電は伸びないと見込んでおり、「歴史的転換点」だとまとめた。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

■太陽光と風力発電は、需要増分を上回った
2025年第1〜第3四半期において、太陽光発電は前年同期から498 TWh(31%)増、風力発電は同137 TWh(7.6%)増となり、合わせて635 TWh増加した。
同期間中、世界の電力需要は、データセンターや冷暖房の利用を背景に前年同期から603 TWh (2.7%)の増加だった。太陽光・風力発電の拡大が、電力需要の増加分を上回った。
なかでも太陽光発電の拡大は著しく、今年9月の時点で、2024年通年での太陽光発電量を超過した。

(c) Ember
■中国とインドで化石燃料発電が減少に転じる
中国では、今年9月までの9カ月間、化石燃料発電が52 TWh(1.1%)減少した。さらにインドでも、34 TWh(3.3%)減少した。これら2カ国が牽引する形で、世界は化石燃料による発電を抑制した。
ご参考:世界の再エネ発電量が初めて石炭を抜く、主役は中国とインド
過去に、化石根燃料の発電が落ち込んだのは、いずれも、金融危機やパンデミックなど、電力需要全体が落ち込んだ時に限られていた。2025年は、電力需要が拡大する中で化石燃料の発電が増加を見ておらず、報告書は「歴史的な転換点」だとまとめた。
エンバーでシニアデータアナリストを務めるニコラス・フルガム氏は、「これまで成長領域だった化石燃料による発電は、停滞期ならびに緩やかな衰退期に入りつつある。化石燃料拡大の最大のけん引役だった中国が転換点を迎え、電力需要の増加分を化石燃料に依存する必要がなくなった」とコメントした。



