三宅島では以前から、ネズミによる農作物の被害があり、駆除のためにイタチを放していた。島内で繁殖することのないよう、当初は、雌雄を同時に放すことはしてなかった。しかし、ある時、雌雄で放され、急激に増えたイタチは、ネズミよりも捕食しやすいオカダトカゲをほぼ絶滅させてしまった。その間、わずか10年余り。
同じように移入されたホンドイタチによると思われるオカダトカゲの激減は、八丈島や青ヶ島でもみられる。
オカダトカゲは、現在の伊豆半島が本州と陸続きになる前、伊豆諸島と一体の陸地だった頃に独自の種として進化したトカゲと考えられている。
伊豆半島周辺には、外見上、ニホントカゲによく似た亜種がいて、伊豆諸島でも大別して北部、三宅島、そして南部と3つのグループがあるとも聞く。生物多様性を形成する種や亜種の分化を考えていくときには大変貴重な生きものだ。しかし、その要の位置にいる三宅島のオカダトカゲは姿を消してしまった。

伊豆諸島をさらに南へ行った小笠原諸島の父島、母島では、ある意味、真逆のことが起きている。増えすぎた外来種のトカゲ、グリーンアノールが、固有の昆虫類などに甚大な影響を与え、世界自然遺産としての小笠原の価値をも揺るがしかねない深刻な事態なのだ。
グリーンアノールは、元々はフロリダなどを原産地とするトカゲだ。ペットとして、あるいは荷物にまぎれて、小笠原諸島に入ってきたと言われる。現在の生息数は、数百万匹。既に全面的な駆除は困難な状況のもと、トカゲが外から入れないよう区切った内部で徹底的な駆除を行い、その中で、固有の昆虫類などの繁殖を図ろうとする取組等もなされている。
ところがそのさなか、2013年3月に、従来いないとされていた兄島でも発見され、関係者に衝撃が走った。緊急の駆除と分布域の拡大防止策が講じられるも、未だ根絶には至らない。
父島、母島では既に生態系に組み込まれ、希少なオガサワラノスリ(ノスリの1亜種)などの重要な餌となっているという。そして野鳥が捕えてきたグリーンアノールを巣の周辺で取り逃がすことも、分布域拡大の一因ではないかとの推測もある。となると現在生息しない島々でも飛翔力のあるノスリが営巣できるような島は監視を怠ることができない。