サステナ経営塾2025: [りそなアセットマネジメントのスチュワードシップ戦略] りそなアセットマネジメント 松原稔・常務執行役員講義

記事のポイント


  1. サステナ経営塾21期下期にりそなアセットマネジメントの松原・常務執行役員が登壇
  2. 講義では、投資先企業と対話する際のポイントなどスチュワードシップ戦略を語った
  3. ESG領域の活動については、「どう工夫しているか」を起点に質問を重ねるという

オルタナは11月19日、サステナ経営塾21期下期第2回を開いた。第4講には、りそなアセットマネジメントの松原稔・常務執行役員責任投資部担当が登壇し、「りそなアセットマネジメントのスチュワードシップ戦略」と題して講義した。講義の要旨をまとめた。

松原・常務は、企業との対話では、ESG領域の活動を「やっているか」ではなく、「どのように工夫しているか」を問うようにしていると語った

・私は1991年に銀行に入り、以来ずっと資産運用の世界に携わってきました。ちょうどスチュワードシップ・コード(日本での制定は2014年)やコーポレートガバナンス・コード(日本での制定は2015年)が登場した頃から、投資家としての役割が社会的に注目されるようになり、委員会活動なども通じて「社会に役立つ金融とは何か」を考えるようになりました。

・当社のルーツは企業年金です。1962年の制度創設時に誕生し、以来60年以上、企業年金・公的年金とともに歩んできました。現在の運用残高は60兆円弱、約95%が年金資金です。つまり、私たちが預かるのは、皆さんの40〜50年にわたるビジネスパーソンとしての人生そのもの。将来世代の生活を支える長期資金だからこそ、30年先の企業の姿を見据え、財務諸表に表れない「続く理由・伸びる理由」を探る必要があります。ここにサステナビリティが重要な意味を持ちます。

・スチュワードシップの根幹は、企業の「稼ぐ力」を後押しすることです。かつては「買うか売るか」の世界でしたが、スチュワードシップ・コードの制定により「持ち続けて対話する」という選択肢が生まれました。日本は世界と異なり、投資家の行動原則(他律)から整備が始まり、その後に企業側の原則(自律、コーポレートガバナンス・コード)が整いました。リターンを高め、生産性を上げるという日本独自の課題認識が背景にあります。

・私たちの対話活動では、まずパーパス(存在意義)を起点としています。それは「将来世代に豊かさと幸せを提供する」こと。金融を単なる「血液」ではなく、流したい方向と意思を持つ存在へと再定義しました。マテリアリティは社内外双方の声を踏まえて8領域を特定し、特に若い世代からの要望が強かった少子高齢化やD&Iも重視しています。

・企業との対話では、未来志向の質問を重ねます。「30年後、どんな会社でありたいか」「悪い時にどう立て直すのか」「ガバナンスはどう機能しているのか」。人的資本や人権についても、単に「やっているか」ではなく、「どのように工夫しているか」を問います。企業文化を知るために、社外取締役との対話も重要です。

・AIを活用し統合報告書を偏差値化して評価し、レーダーチャートを用いて企業との議論を深めています。3種類のコーポレートレポート間の整合性も確認し、企業価値向上につながる開示を促しています。

・投資家は企業を「文化人類学的」に観察します。社長の語り口や企業サイトの雰囲気、社員の姿勢など、細部に企業の本質が表れます。だからこそ、私たちは企業の価値観・物語を理解し、将来世代にとって望ましい社会の実現に向けて、共に歩む対話を続けていきたいと考えています。

susbuin

サステナ経営塾

株式会社オルタナは2011年にサステナビリティ・CSRを学ぶ「CSR部員塾」を発足しました。その後、「サステナビリティ部員塾」に改称し、2023年度から「サステナ経営塾」として新たにスタートします。2011年以来、これまで延べ約700社900人の方に受講していただきました。上期はサステナビリティ/ESG初任者向けに基本的な知識を伝授します。下期はサステナビリティ/ESG実務担当者として必要な実践的知識やノウハウを伝授します。サステナ経営塾公式HPはこちら

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