経済成長とCO2排出量のデカップリングは世界の標準に: 報告書

経済成長を続けながらCO2排出量を大幅に削減する「デカップリング（分離）」が世界で進む。英シンクタンクのエネルギー気候インテリジェンスユニット（ECIU）が報告書の中で明らかにした。ECIUが世界のGDPの97％を占める国を分析したところ、デカップリングに成功している経済圏は、世界GDPの92％、排出量の89％を占めた。経済成長と環境負荷の低減はもはや二項対立の関係性ではなく、GDP成長と排出量の増加は連動しないのが世界標準だ。（オルタナ輪番編集長＝北村佳代子）

■「デカップリングは今や標準に」

英シンクタンクのエネルギー気候インテリジェンスユニット（ECIU）は12月11日、「パリ協定から10年：経済成長と排出量のデカップリングは世界でどのように進展したか」と題する報告書を公開した。

それによると、経済成長とCO2排出量が切り離された「デカップリング」に成功している経済圏は、世界のGDPの92％、排出量の89％を占め、デカップリングはすでに世界規模で実現していることが明らかになった。

報告書の執筆者でECIUのネットゼロ・トラッカーの責任者を務めるジョン・ラング氏は、「成長を犠牲にしなければ排出削減は不可能だと言われることがあるが、実際には逆の現象が起きている」と力をこめる。

「排出量と経済成長のデカップリングは、例外ではなく標準となった。絶対的に排出量のデカップリングを達成している経済圏の比率は着実に増加している。この構造転換は疑いようがない」（ラング氏）

■主要排出国もデカップリングへ向かう

ECIUの研究者らは、パリ協定が採択された2015年を境に、採択前の10年間（2006～2015年）と、採択後（2015年～2023年）との2つのタイムフレームに分けて、各国の経済成長と排出量の動向を分析し、各国を分類した。

「絶対的デカップリング」のカテゴリーには、経済成長を実現しながらCO2排出量を減らした国・地域が入る。日本は、パリ協定採択前も後も、一貫してこのカテゴリーに入る。

パリ協定採択前では、絶対的デカップリングを達成した国は日本を含む32カ国あり、排出量は増加したがその伸び率が経済成長率よりも緩やかだった「相対的デカップリング」の国の数は35カ国だった。

パリ協定が採択された後で見てみると、絶対的デカップリングを達成した国は、日本を含む43カ国となり、相対的デカップリングの状態にある国も40カ国と、パリ協定採択前から増加した。

「一度は経済成長を上回る排出量の増加を見た国々が、排出量とのデカップリングで強力な前進を見せている」と報告書は指摘する。先進国やラテンアメリカ・アフリカ・中東の広範囲にわたって、経済成長と連動する形で、一度は排出量が増えた主要排出国の多くが、「絶対的デカップリング」の状態に移行した。

絶対的デカップリングを達成した経済圏は現在、世界のGDPの46.3％、排出量の36.1％を占める。相対的デカップリングを達成した経済圏も含めると、世界のGDPの92％、排出量の89％を占める。

一方、この流れと逆行する形で、パリ協定の採択前では「絶対的デカップリング」を達成していたのに、その状態ではなくなった国も確認した。アゼルバイジャン、ドミニカ共和国、リトアニア、ラトビア、マラウイ共和国、ニュージーランド、エルサルバドル、スロベニア、トーゴ共和国の9カ国だ。