来年4月に施行される電力小売の全面自由化を前に、小売事業者が発電方法や発電で生じる廃棄物の量などを消費者に示す「電源表示」の義務化が見送られようとしている。国は電源表示に関して「努力義務」とし、表示がない場合でも罰則を設けない。消費者団体などからは、義務化や統一された形での表示を求める声が上がっている。(オルタナ編集委員=斉藤円華)
■「誰のための電源表示なのか」
経産省の電力取引等監視委員会がまとめた「電力の小売営業に関する指針(案)」では、電源表示を「望ましい行為」として小売事業者に求める方針だ。義務化ではないため、表示の仕様は標準化されない。
このため、事業者によって表示の内容や方法がバラバラとなり、電源表示が消費者にとってわかりにくいものとなる可能性も出てきた。委員会が示した表示例では、発電にともなうCO2排出量の項目はあるが、原発から出る核のゴミ(使用済み核燃料や放射性廃棄物)の量については項目がない。
また、表示例ではFIT(自然エネルギーの固定価格買取制度)で調達された電力について「火力発電なども含めた全国平均の電気のCO2排出量を持った電気として扱われる」と説明。FIT電気の買取費用が、賦課金として電気料金に上乗せされているためだ。しかし一見すると、例えば太陽光で発電したFIT電気もCO2を排出しているかのような印象を与えかねない。
22日には消費者団体などでつくるグループが「需要家が選択できる電力市場の実現を」と題して都内で集会を開いた。出席した経産省担当者らを前に「一体誰のための電源表示なのか疑問だ」(自民党・秋本真利衆院議員)「現状では消費者の期待に応えていない」(消費生活アドバイザー・辰巳菊子氏のメッセージ)など、案を疑問視する声が相次いだ。