海洋白書、「海洋酸性化」と生物多様性の危機に警鐘

最新の白書について説明する海洋政策研究所の寺島所長
最新の白書について説明する海洋政策研究所の寺島所長

笹川平和財団海洋政策研究所はこのほど、『海洋白書2016』を刊行した。昨年は複数の国際会議で海洋問題が取り上げられた節目の年。その2015年の国内外の動きを266ページの冊子にまとめた。(オルタナ編集委員=瀬戸内千代)

2016年版は、「大きく動き出した海洋をめぐる世界と日本の取組み」がテーマ。領海が絡む政治的な課題から、洋上風力発電などエネルギーや資源利用の現状、「海の日」イベントといった普及啓発活動まで、海洋に関する話題を分野横断的に紹介している。

「人間活動が海洋システムに及ぼす変化」の章では、パリ協定採択など2015年ならではの話題を取り上げた。特に、海洋の生物多様性を根幹から揺るがす「海洋酸性化」については、約3ページにわたって記述した。

二酸化炭素は冷たい海ほど溶け込みやすく、酸性化は北から広がる。多様な生き物をはぐくむ造礁サンゴは温暖化の影響で北上しつつあるが、酸性化に弱く、やがて行き場を失う。日本周辺では、あと50年で生息適地が無くなると言われている。

刊行に際して寺島紘士所長は、「今年は、海洋酸性化、公海の生物多様性、それから北極海(資源や生物多様性の問題)に焦点を絞って、新事業を展開していく」と抱負を述べた。

『海洋白書2016』は成山堂書店から税別2000円で一般向けにも販売している。例年、教科書代わりに購入する大学もあるという。

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瀬戸内 千代

オルタナ編集委員、海洋ジャーナリスト。雑誌オルタナ連載「漁業トピックス」を担当。学生時代に海洋動物生態学を専攻し、出版社勤務を経て2007年からフリーランスの編集ライターとして独立。編集協力に東京都市大学環境学部編『BLUE EARTH COLLEGE-ようこそ、地球経済大学へ。』、化学同人社『「森の演出家」がつなぐ森と人』など。

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