いま超格差社会が世界を席巻している。利権、権力構造は政産官学のエリート層によって作られているからだ。利権権力者が回転ドアのように権力を移り歩くが、その原動力は「マネー」である。もうそれは経済学で論じられない、強欲資本主義そのものの「性」だと言うのである。
まさにそうと思うしかない。超格差社会が市民、普通の国民を不幸にし、中間層は凋落し、格差下位であえいでいる、特に若者が呻吟する。
かくして世に、不公平、不満、不安が蔓延するが、それは世界的な傾向で、英国も例外ではない。この仕組みが、一見素晴らしく喧伝される「グローバリゼーション」だが、その実、国際的な大企業専横の結果にすぎない。
古来から中間層が民主主義を支え、培養してきた。いまそれが衰退していると考え る。これが私が繰り返し述べている「有限地球観」「文明史観」である。
「成長の限界」という本がある、1972年、上梓されたが、世界の識者、とくに経済学者から無視されてきた。私はむしろ当然な理念、思想と思ってきた。「沈黙の春」とともに大学や社会で啓蒙してきた。

この社会が無視してきた思想、理念が顕在化、今回の英国のEU離脱騒動に至ったと私には思われてならない。なぜなら、人間は自然の仕組みから逃れられない、自然の恵みで生きるしかないからである。
世界的な文明崩壊、基本構造の変動、それらは革命的に起こりつつあるようだ。昔は革命として顕在化した、バリの市民革命もそうだった。第一次、第二次世界大戦も文明的な軌道修正の過程であったのではなかろうか。
今の世界的な不安定、局地的紛争などは、もう小規模な戦争と言うべきだ。各地の紛争、テロなどは、社会の根底に潜む不公平、非条理が顕在していると考えられる。
世界各地で暴発するが激動、異変、その底辺には「食料、エネルギー、軍事」の問題があると考えるが、如何であろうか。

東京大学理学部物理学科・地球物理学卒。東京大学名誉教授であり、「もったいない学会」名誉会長。元国立環境研究所長でもある。専門は地球学、エネルギーと資源の科学など。単著書には『石油最終争奪戦ー世界を震撼させる「ピークオイル」の真実』(2006)、『石油ピークが来た―崩壊を回避する「日本のプランB』(2007)、『石油ピークで食糧危機が訪れる』(2009=いずれも日刊工業新聞社)がある。