化粧品メーカーが「真の美しさ」を追求する意味とは

アカアシドゥクラングールにレジーという愛称を付け、キャンペーンを展開。日本では唯一よこはま動物園ズーラシア(横浜市)がドゥクラングールを飼育している
アカアシドゥクラングールにレジーという愛称を付け、キャンペーンを展開

「真の美しさ」とは何か。世界で最もエシカルで持続可能なグローバルビジネスの実現を目指すザ・ボディショップは、新たなコミットメント「より良く、より豊かに」を宣言し、14の目標を立てた。その一環として、2016年、世界60カ国で生物多様性保全のグローバルキャンペーン「バイオブリッジキャンペーン」を開始。日本では9月21日まで、買い物1回につき熱帯雨林1平方メートルが再生されるキャンペーンを展開している。(オルタナ副編集長=吉田広子)

バイオブリッジキャンペーンは、対象期間中、店頭やオンラインショップで買い物をすると、売上金額の一部が環境保護団体に寄付される仕組みだ。商品や金額の大小にかかわらず、1回の買い物につき1平方メートルの森が再生される。日本では6月から9月21日まで実施されている。

■世界一美しいサル「ドゥクラングール」

ベトナムなどに生息する絶滅危惧種アカアシドゥクラングール。日本では唯一よこはま動物園ズーラシア(横浜市)が飼育している ⒸBjornolesen.com/Viet Nature Conservation Centre
ベトナムなどに生息する絶滅危惧種アカアシドゥクラングール。日本では唯一よこはま動物園ズーラシア(横浜市)が飼育している
ⒸBjornolesen.com/Viet Nature Conservation Centre

愛くるしい黒い目、白く長いしっぽ、靴下を履いたような赤い足が魅力的なアカアシドゥクラングール。

世界一美しいサルと呼ばれるドゥクラングールは、ベトナムやラオスなどの熱帯雨林に生息している。だが、熱帯雨林の消失や違法な狩猟などによって、絶滅の危機に瀕している。

ザ・ボディショップは、このドゥクラングールに「レジー」という愛称を付け、「レジーの恋人探しを手伝おう!」と呼びかけ、バイオブリッジキャンペーンを展開。集まった寄付金は、国際環境保護団体ワールドランドトラスト(WLT)に寄付する。WLTは現地NGOベトネイチャーとともに保全活動を実施し、植樹や生息する動植物の調査を行うほか、違法伐採などがないか、森のパトロールを行う。2016年はベトナムの熱帯雨林1450万平方メートルを保全する。

■先住民もより豊かに
同社が目指すのは、包括的な生物多様性の保全だ。人口の85%を占めるキン族と53の少数民族で構成されるベトナムでは、少数民族の失業率や貧困が問題になっている。彼らは、暮らしのためにやむを得ず、違法伐採や絶滅危惧種でも食糧として狩猟してしまう事情もある。

そこで、現地パートナーのベトネイチャーは、熱帯雨林に暮らす先住民に対し、生物多様性の重要性を訴え、環境教育や農業支援を実施するなどコミュニティ開発に力を入れている。バンキオ族のホー・ミンさん(53)はもともと、手作りの銃で狩猟をしながら森の中で暮らしていたという。だが、収入は常に不安定だった。

ミンさんは地元政府やベトネイチャーの支援を受けて、現在は米を育てたり、魚を捕ったり、養蜂したりしながら生活している。ミンさんは「今の暮らしは居心地が良く、もう森の中に戻る必要はない」と笑った。

■自然資本はビジネスの基礎

「美しい自然と動物に感動した」と話すザ・ボディ ショップのケイト・アプションさん
「美しい自然と動物に感動した」と話すザ・ボディ
ショップのケイト・アプションさん(ベトナム中部・ケ・ヌク・チョン・フォレス トで)

「私たちの生活やビジネスは自然資本に依存している。『真の美しさ』を追求するザ・ボディショップが自然を守っていくのは当然のこと」

こう話すのは、ザ・ボディショップのインターナショナル・コーポレート・レスポンシビリティ・マネージャーのケイト・アプションさんだ。

ザ・ボディショップは1976年の創業以来、「ビジネスは世の中を良くする力がある」という信念で事業を続けてきた。創業40周年を機に、新たなコミットメント「より良く、より豊かに。私たちが変えていく」を定めた。コミットメントは、「人」「製品」「地球環境」の3本柱から成り、2020年までの達成を目指す14の目標が設定されている。

イオンフォレスト(ザ・ボディショップ ジャパン)の福本剛史社長は「ザ・ボディショップはビジネスの力で、社会をより良くできると信じている。消費者の意志を大きな力に変えていきたい」と意気込む。

「広大な森に1本1本植えていく、果てしない道のり。森が再生するのも何世代も先のこと。だからこそ、この森を守り続けるには多くの支援が必要だ。ザ・ボディショップは、ベトナムの問題を世界に発信し、経済的な支援だけではなく、多くの可能性をもたらしてくれる。こうした応援があればより一層頑張れる」

力強く語るベトネイチャーのトゥアン・アン・ファムさんの笑顔が印象的だった。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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