有機農業と子どもたちの未来

本当に良い野菜・おいしい野菜とは

――お二人が考える「良い野菜」というのはどういうものでしょうか。例えば、色の濃い青々とした野菜がおいしいとは限らないと聞いたことがあります。

武内さん:そうですね、青々とした野菜は一見美味しそうに見えますが、それは硝酸態窒素を過剰に貯め込んだ野菜で、いい状態ではありません。

3d286c066077720590e492e614c9bbcc野菜が育つのに、硝酸態窒素は必要なのですが、過剰は良くありません。土壌の硝酸態窒素の量は季節に左右され、温度が高い時期は吸収しやすくなりますので、野菜が吸い込みすぎないように調整をしなければなりません。

例えばほうれん草は本来は冬のものですが、夏に栽培するほうれん草はキチンと育てなければ硝酸態窒素の量が上がり、青々としていても苦みやアクが強いものになるわけです。硝酸態窒素の量が上がると、繊維質が弱くなるから虫がつきやすくなり、そのために農薬を使うという悪循環にも陥ってしまいます。

消費者は通年同じ野菜を求めますので、必要とされる野菜を旬ではない季節にも提供することが商売になってしまっています。本当に良い野菜やおいしい野菜というのは、適地適作、季節にあった野菜なのですが、それらを無視して栽培された野菜はどうしても味が落ちるわけです。

また、最近は甘い野菜がブームです。なんでもかんでも甘いものが美味しいと言いますが、それは本来のおいしい野菜とは違うと思いますね。野菜にはそれぞれの個性的な味わいがあるのですから。極端に言えば、ステビア等の高糖度の資材を使った栽培で糖度を上げる方法もあります。

――旬を無視した需要と、「おいしい」の本来の意味を消費者が取り違えているという問題があるのですね。消費者側の学習も必要なのだなと考えさせられます。では、おいしい野菜をつくるのに一番大切なのは何でしょうか。

武内さん:おいしい野菜をつくるには、やはり良い土壌が大切です。野菜の良し悪しは土で決まります。良い土壌で野菜をつくれば、何もしなくてもおいしい野菜ができます。

588f5dc5c85286438783f2302a488dbeでも良い土壌はすぐにできるわけではありません。土壌を深さ1センチ、自然につくるには約100年かかるといわれています。私たちはポテンシャルの高い土地を見つけ、その10センチの表土を時間をかけて丁寧に力のある土壌にしていきます。そしてそこに適した野菜を育てる。その目利きと技、知識を持つ人材を育てることが私たちの使命と思っています。

有機農業に携わるきっかけ

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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