
180年前のヨーロッパのラグジュアリー・ブランドも、500年前の日本の羊かん屋さんも、戦後に大発展を遂げた著名なメーカーも、ブランディングに際して、はじめの一歩は『らしさ』の探求です。『らしさ』は、現代企業の命運を左右する、無形の競争優位の源泉です。そして、そのシンボルとなるのが、「ロゴマーク」です。今回も、牧場主・Aさんのブランド戦略をモチーフに、「ロゴ」がどれほど重要であるかを解説します。
『ロゴマーク・A』の意味
Aさんは、真摯な『想い』と『こだわり』を持って、自分ならではの育て方や製法で、格別の牛肉を提供します。自分が誇りと責任を持って提供できる牛肉だけに、ロゴマーク「A」をつけ、包み紙や店頭などで、自分の『想いやこだわり』をメッセージとして発信します。
もちろん、マークは商標登録済です。この「想い」「こだわり」「ならでは」こそが、『らしさ(Brand Identity)』なのです。『らしさ』は、表層的なイメージだけでなく、「自分(自社)とはいったい何者なのか」という自己の存在意義に関わる問いかけに対して、その答えとして深層から湧き出る概念です。
顧客や社会は、「A」というシンボルマークを見て、その『らしさ(Brand Identity)』に期待をしてきます。ブランド・アイデンティティ(Brand Identity)とは、ブランドの基本コンセプト、すなわち、企業が顧客やステークホルダーの頭や心の中に何を築きたいのか、どんな約束をしたいのか、ということです。
その『約束』の目印が、ロゴマークです。お客様やステークホルダーは、「A」というシンボルマークを見て、その『らしさ(Brand Identity)』に期待をしてきます。「『A』って、○○だよねー!」という期待に応え続けられれば、「A」というマークは、単なる記号ではなく、「信頼と愛着」のシンボルとして機能します。「Aといえば、○○」「○○といえば、A」という『ブランドの約束(ブランド・プロミス)』が堅持されます。
ヨーロッパのラグジュアリー・ブランド等が、模倣品や偽物に対して、あれほどナーバスなのは何故でしょう?自社の売上に響くこともあるのかもしれませんが、何より、自社の『命』とも言える「ロゴマーク」を冠せられてしまった粗悪品が出回ることによって、『約束(ブランド・プロミス)』が守れなくなることが痛手になるという見方は重要です。「最近、○○ブランドって、今イチだよねぇ」といった風評が立つのが最も脅威だといっても過言ではありません。