画期的なのは、燃料を使わず可燃性廃棄物を無機化し、平均1/300(玉三屋食品では実際1/1000)に減容するだけでなく、排熱や有毒ガス、騒音、振動をほとんど出さずに再資源化する仕組みを持っているのです。処理可能な廃棄物には、感染性医療廃棄物、廃プラ、野菜くず、下水汚泥、糞尿が含まれています。
しかしながら、国内での本格的な普及に向けては、現行法に規定された焼却施設の構造基準を満たさず、廃棄物処分業の許可を取得できない状態になっているのです。その後2015年、熊本県内の農場で、環境課題となっている水質汚染の主原因と考えられる畜糞の硝酸性窒素を効率的に処理できることを証明するため、実験を実施。投入した廃棄物(牛糞)をセラミクス粉、排ガス(O2、NOx、CO2)、凝縮水、タール類に分解し、硝酸性窒素を効率的に処理できていることが証明されています。
ERCM方式の熱分解で執り行われた処理方法において、補助燃料、すなわち化石燃料を使わず、牛糞・木屑のみの投入で、有機物の持つエネルギーだけで処理していることの確認も実験によってわかるものとなっています。
ゴミ処理のオープン・イノベーション
人間が生活する限りゴミは出続けます。人間が存在する限り地球は汚染され続けていくのです。そんな中で、共同開発者、吉川邦夫博士(東京工業大学)はERCMの稼働によって高温が生ずるだろうと予想されるもののERCMの本体部である熱分解炉が熱くないことに衝撃を受けたと語っていますし、熊本県内で共に実証実験を行った鳥居修一教授(熊本大学大学院)は、ERCMの特徴を「既存の手法と比較して減容率は最低10倍以上であるだけでなく、減容された材料が全てセラミックとなり、そのまま土地に散布しても害がない」(出典:2016年9月12日付「循環経済新聞」)と指摘しています。そのセラミックの成分は環境安全基準内にあるということです。
このような装置が当たり前にゴミ焼却の拠点となる場に設置されれば、これまでのゴミ処理の常識を大きく変えるに違いありません。この装置にゴミを投入するにあたり、分別の必要がありません。ゴミとなったモノの生成を考え、リサイクルのための分別をしなくてもいいのです。
しかも他の公害を発する危険性もありません。技術力の素晴らしさを強く感じます。