2017年の「種の保存法」改正
改正が迫る2016年の一年間、「種の保存法」を所管する環境省は、各分野の専門家による法改正に関する検討会などを実施。
「種の保存法」が真に野生生物種の保全に貢献する法律となるように、WWFジャパンとトラフィックもこれに参加し、継続した意見の陳述や提言を行なってきました。
そして、一連の議論を踏まえ、環境省は「種の保存法」の改正案を発表。
これが、2017年2月28日に閣議決定され、国会で審議される運びとなりました。 この改正で、環境省が大きく見直したとする点は、大きく以下の4点になります。
- 二次的自然等に分布する絶滅危惧種保全の推進:
「特定第二種国内希少野生動植物種」制度の創設 - 動植物園と連携した生息域外保全等の推進:
「認定希少種保全動植物園等」制度の創設 - 国際希少野生動植物種の流通管理強化:
①個体等登録手続の改善 / ②「特別国際種事業者」の登録制度の創設 - 生息地等保護区の保全の促進
①「科学委員会」の法定化 / ②国内希少野生動植物種の提案募集制度創設
さらにこの他にも、改正に向けて日本国内の各自然保護団体が、重要な課題として指摘してきた問題点、改善点がありました。
今回はこの中から特に、「二次的自然等に分布する絶滅危惧種保全の推進」について解説します。
「国内希少野生動植物種」の保護と、その捕獲・採取
絶滅の恐れのある日本の野生生物を保護することを、大きな目的に据えた「種の保存法」では、「国内希少野生動植物種」を指定しています。
この「国内希少野生動植物種」は、日本が国として法的な保護を約束している日本の野生生物で、現在はトキ、ライチョウ、イリオモテヤマネコ、アベサンショウウオ、アユモドキ、ヤシャゲンゴロウ、ムニンツツジ、ヤクシマリンドウなど、208種が対象となっています。
これらの動植物については、それぞれについて保護増殖事業計画が策定されるほか、捕獲・採取なども禁止されています。
つまり、これらの生物の捕獲や採取などを行ない、罪が認められた場合は、「種の保存法違反」という罪状になるのです。
もちろん、学術研究や、人工的な繁殖計画を行なうための捕獲や採取は可能であり、実際、保護のためには、そうした取り組みが欠かせません。
しかし、そのためには当然ながら、特別な捕獲許可を環境省に申請する必要があり、その手続きが調査研究などを阻害してしまう例が、以前から指摘されていました。
特に、水田や里山のような「二次的自然」と呼ばれる環境に生息する魚類や両生類、昆虫類など、身近な動植物ほどその例が顕著でした。
「特定第二種国内希少野生動植物種」制度の創設とその課題