NPOカレッジ「カイケツ」第2期、課題解決へ結集

トヨタ財団は5月19日、トヨタ自動車の問題解決手法をNPO向けに伝える「トヨタNPOカレッジ カイケツ」の第2期を開講した。今回は、「問題解決」の8ステップの1つ目「テーマ選定」。17団体の代表が4グループに分かれて、どんな問題を解決したいのか、講師とともにテーマ選定を行った。(オルタナ副編集長=吉田広子)

「トヨタNPOカレッジ カイケツ」は、トヨタ財団が助成金を拠出するだけでなく、トヨタ自動車の手法を活用し、NPOに問題解決力を身に付けてもらうことを目的に企画した。これにより、各NPOが社会課題解決の担い手として各地域で活躍してもらうことを目指す。2016年度に続き、2期目の開催となる。

講師は、トヨタ自動車業務品質改善部の古谷健夫主査、同社同部第1TQM室の藤原慎太郎主査のほか、元トヨタ自動車の改善QA研究所の杉浦和夫氏、のぞみ経営研究所の中野昭男所長の4人が務めている。

■「意識」ではなく「行動」を見る

藤原講師(中央)は「具体的な問題として何が起こっているのか」を問いかける

問題解決のステップ1「テーマ選定」では、「何を解決すべきか」を決定する。その問題が重要であるか、問題が拡大しているか、問題の影響は大きいか――など、さまざまな観点から何を解決すべきかを判断する。

参加したNPOからは、「スタッフの意識が低い」「情報が共有されない」「指示通りに動いてもらえない」といった問題が多く挙げられた。

これに対し、藤原講師は、「共有されていないことで起こる具体的な問題は何か」、「意識が高いというのは、どういう状態か」と問いかける。

「あるアンケートで、社長は『チャレンジしている社員は少ない』と言い、社員の8割は『チャレンジしている』という結果が出た。意識は目に見えないので、絶対にずれがある」(藤原講師)とし、目に見える「行動」レベルを指標化することを提案した。

トヨタ自動車には、安全性向上のための標語「ポケテナシ」があるという。ポケットに手を入れない、歩きながら携帯電話を使わない、階段の手すりを触る、斜め横断しない、指差し確認をする――の頭文字を取った標語だ。単に「安全第一」と呼びかけるのではなく、具体的な行動に落とし込むことで、安全性を高めている。

■何が問題かを深堀りする

あなたの街の「三河や」さんの金井理さん(中央)。杉浦講師の指導のもと、どんな問題が起こっているのかを整理していく

特定非営利活動法人学校ICTサポーターズ(徳島県)理事長の重金晋さんは、徳島県内の特別支援学校にIT技術者を派遣することで、教師の負担を軽減し、業務を効率化するという支援を行っている。

重金さんは、「派遣した技術者から日報が期日通りに提出されない」という悩みを抱えていたが、中野講師と「日報が提出されないことで、どんな問題が起こっているのか。何を解決すべきか」を深堀りしていった。

そこで見えてきたのは、時間コストの上昇と潜在的なサービスのばらつきだ。そこで、問題解決のテーマを「時間コストの削減」に設定した。

NPO法人あなたの街の「三河や」さん(仙台市)は、高齢者、障がい者、入院患者といった生活弱者の買い物代行やゴミ出し、安否確認などを行っている。同団体は、ゴミ回収の依頼が多く、作業場がゴミで埋まってしまっているという。そこで、その回収したゴミを資源化し、スペースを確保した上で、滞留しないように作業を効率化していくことを目指す。

同団体の金井理さんは、「本当に困っていたが、多角的な見方ができて光が見えた。自分が気付けていなかったことにも気付けた。これから問題を解決するために頑張っていきたい」と意気込んだ。

■ファンド・レイジングは「5W1H」で

山元圭太代表取締役COOはファンド・レイジングの「5W1H理論」を展開した

カイケツ終了後は、オプショナル講座「ファンド・レイジング(資金調達)」が開かれた。講師を務めたPubliCo(パブリコ)の山元圭太代表取締役COOは「5W1H理論」を展開。

「Why?(何のために?)」、「What?(何を集めるのか?)」、「When?(いつ集めるのか?)」、「Who?(誰から集めるのか?)」、「Where?(どこで集めるのか?)」、「How?(どう集めるのか?)」を意識して、ファンド・レイジングすることの重要性を語った。

山元代表取締役COOは、「ファンド・レイジングには、街頭募金、クラウド・ファンディングなど、たくさんの手法がある。オンラインで広く募るより、手紙を書いた方が響く場合もある。新しい手法に目移りせず、ターゲットに合っているのかを重視することが必要だ」と強調した。

カイケツの第3回は6月25日に開催される。問題を解決するための2つめのステップ「現状把握」を行う。

<トヨタ自動車の「問題解決」の8ステップ>

1.テーマ選定:
解決すべき対象を決める。問題の重要性、問題が拡大傾向にあるか、問題の影響の大きさなど様々な観点から何を解決すべきか判断する。経営者の重要な役割。

2.現状把握:
現状の姿を客観的かつ定量的に認識すること。事実・データに基づいて伝えることがポイント。

3.目標設定:
何を、いつまでに、どのようにするのかを具体的に決める。マイルストーンを置いて、取り組みの経過を可視化する。

4.要因解析:
なぜを繰り返して、真因を探る。なぜを繰り返すことで、具体的な実施事項が出てくるので、論理的、合理的な解決策が期待できる。

5.対策立案:
対策内容を整理して、実行計画を立てる。5W1Hを明確にして、最も効果的と思われる対策案から手掛けていく。

6.対策実行:
計画通りにやりきることが大切。

7.効果確認:
対策内容への評価を行う。「対策をほとんど実施し、期待通りの成果が出た」「対策はほとんど実施したが、成果は得られなかった」、「対策はほとんど実施しなかったが、期待通りの成果が得られた」、「対策はほとんど実施せず、成果も得られなかった」の4つのパターンが考えられる。

8.標準化と管理の定着:
効果が出た対策の内容を標準化して、その後の取り組みに反映させていく。こうすることで、同じ問題の再発を防いでいく。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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