土葬・火葬の課題を解消するエコ埋葬、「プロメッション」とは

いま私たちは、人生の最後を迎えるときまで環境問題を考える時代に生きている。スウェーデンのプロメッサ・オーガニック社は、遺体を急速凍結して細かく崩し、乾燥させて粉末にし、大地にかえす前代未聞のエコ埋葬「プロメッション」を開発した。粉になった遺体が腐植土化するのは植物の命の糧になることで、故人の生命が続くとも解釈でき、土葬や火葬による環境汚染などの問題が軽減できると注目を集めている。(チューリヒ=岩澤里美)

■「自分の遺体を肥料にしたい」

プロメッション埋葬のイメージ

新しい埋葬法「プロメッション」は次の通りに行われる。

まずマイナス18度で保った遺体を木製の棺に納め、マイナス196度の液体窒素に浸して凍結する。崩れやすくなった遺体を棺ごと数秒振動して粉状にし、フリーズドライ機にかけて水分を抜く。歯の治療や手術で体内にあった金属を除けば体重の約30%の粉末になる。

両手で持てるほどのサイズの生分解性の棺に入れ、土の浅い部分(微生物やバクテリアが豊富な30~50センチメートルの箇所)に埋めると約1年で腐植土になる。費用は通常の方法より安く済む。

同社の資料によると、土葬の問題はエンバーミング(遺体に防腐の処置をすること)をすると埋葬後に地下水源が汚染される点、1人分の埋葬スペースが大きい点など。火葬の問題は、1回につき23リットルのオイルと500グラムの活性炭が必要で燃料消費が大きい点、大気に燃焼排ガスや水銀(歯の詰め物の成分)が放出される点(火葬から出る水銀が、全水銀放出量の3分の1を占めるという)など。プロメッションだと、これらの心配をしなくて済む。

現在、スウェーデンにこの装置プロメータ―を開設する計画が進行中だ。2018年にはスペインでも完成が期待されている。

同社は2001年、生物学が専門のスーザン・ウィーグ-メサクさんが設立した。趣味の有機栽培を通じて「自分の遺体を肥料にしたい」と考えるようになり研究を重ねた。

アイデアの実現を確信してからは、生物学者の夫や仲間たちと啓発に力を入れてきた。反響は大きく、アメリカはほぼ全土の49州の人々が関心を示すなど、現時点で世界92か国から問い合わせが寄せられている。

ヨーロッパでは2016年秋から、オランダとスペインで正式なパートナー会社が、葬儀関連業者や病院などを中心に、プロメッションについて詳しい情報を提供している。またジャージャー島(イギリス海峡のチャンネル諸島の1つ)のプロメッサ・ソイル社とも協働し、この埋葬の土壌が健康的であるかどうかをさらに探求している。

さまざまな国で、記事やポッドキャストやテレビ番組で同社を取り上げている。スイスでは、すでに2015年10月に、公共放送のサイエンスドキュメンタリー番組がプロメッションのことを放映した。

「プロメーター建設をとにかく早く実現したいと思っていましたが、人々にまずエコ埋葬の重要性を広めることの方が大事だと、あるとき気が付きました。タブー視されてきた死のあり方、本当に望ましい形の葬儀とはどういうものかをプロメッションという方法を通して、みんなでじっくり考えてほしいのです」(スーザンさん)

■韓国の関心大、日本は情報欠

プロメッションを開発したスーザン・ウィーグ-メサクさん(前列左から2番目)。2017年3月、メキシコで実施した3日間集中セミナー「プロメッサ・マスタークラス・エデュケーション」で

2017年5月下旬には、プロメッサフレンドと呼ばれる賛同者たち(無記名登録)は3300人を超えた。フレンドたちには最新情報が届く。2016年はニューヨークとチューリヒでオフ会が開かれた。

日本からは5人のフレンド登録に留まっている一方、韓国では早くも準備が進んでいて、ヨーロッパで第1号が誕生次第、大規模な導入を計画しているそうだ。

スーザンさんは「日本の墓不足も解消できるでしょう」と話し、近い将来、このエコ埋葬が世界の人たちにとって当たり前の選択肢になってほしいと願っている。

◆promessa
http://www.promessa.se

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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