ティアンジュ原発からベルギーの大都市リエージュとオランダのマーストリヒト市を経てアーヘン市までを人間の鎖でつなぐ計画で、全長90kmを国と居住地ごとに割り振り、参加者に目的地点がわかるように地方紙などでも案内を出した。
ドイツ在住日本人が結成した「公益社団法人 さよなら原発デュッセルドルフ」も、協賛団体として企画段階から加わって寄付をし、ネットなどで参加を呼びかけてきた。理事の一人であるミュラー・柴勵子(しば・れいこ)さんは、次のように振り返り、関係者24名の参加に感謝した。
「5月中旬の会合時点での参加登録者は、2万5千人で必要人数の半分以下でした。オランダの通過自治体が『交通安全コンセプト代』として6万6千ユーロを要求し、開催自体が危ぶまれたこともありました。幸いいずれの問題も解決し、脱原発への思いをつなげることができました」
夫と娘と参加した福島県出身の松崎春恵(仮名)さんは、「小さな子ども連れの人たちも多く、こんなささやかな一歩から変えていく力が芽生えるのだと改めて実感しました」と述べた。
12歳のドイツ人イレーネさんは、「チェルノブイリ原発事故の際に彼女と同じ年齢だった母親から当時の話を聴いたので、ティアンジュ原発の事故を防ぐために参加しました」と語った。
政治家の協力も不可欠だった。各地の緑の党は、住民の目的地を往復するバスを用意した。原発の風下に位置する広大な自然保護区アイフェル国立公園の緑の党は、バス1台の予定が200名の申し込みがあり、4台を手配したという。ティアンジュ原発で新たに70のひびが見つかったという最近の報道が、参加者増加の追い風になったとみられている。