こう言われながら育った鈴木由香さんは幼少時、母親から暴力を振るわれ、自己肯定感がないまま大人になったという。「こんな母親にはなりたくない」。そう思いながらも、自分が母親になったとき、同じようなことを繰り返してしまっていた。「どうしてこんなことに」という自己嫌悪が常に付きまとい、夫とも離婚することになった。
鈴木さんは「わんぱくな息子の子育てと離婚の悩みが同時に起こり、精神的に孤立していった。育児本も参考にならない。誰からも子育てを教えてもらえなかった」と振り返る。
鈴木さんは自身の経験から、2014年に子育て支援事業をスタート。これまでに2600組以上の保護者に会い、1500件以上の相談を受けた。現在は価値観を探るカードワークや、内面と向き合う気づきの絵本セラピーなどの講座や個別カウンセリングを提供している。
「子育ては、ママも主役。子どもの個性を生かした子育てができたら、負の連鎖が減るはず」と期待を込めた。
■「ホームステイハウス」の運営で収入向上
体が弱く就労に不安があったおおのめぐみさんは離婚後、亡き父から大家業を引き継いだ。現在は9室のシェアハウスを運営している。
「体が弱い、子どもに手がかかるなど、長時間働けるシングルマザーばかりではない」。そう考えたおおのさんは、「シングルマザーホームステイハウス」を提案する。戸建てやマンションの一室を民泊として貸し出し、宿泊代を得る仕組みだ。おおのさんは「家事の延長とおもてなしの心で、収入を得ることができる」と説明する。
だが、シングルマザーが物件を購入するのは現実的ではない。そこで、おおのさんは、空き家を持っている大家などとシングルマザーをコーディネートする事業の準備を進めている。
おおのさんは「日本語、料理、折り紙、書道、自転車を貸し出す、漫画を貸す――など、工夫次第でオプショナルを付けることもできる。子どもには、外国語やグローバルな価値観を学ぶ機会にもなる。親も子ども輝いてほしい」と語った。
■日本のエーゲ海で薬膳カフェ
飲食店で働く熊田めぐみさんは3年前、ぎっくり腰になり、3週間ほど寝込んだという。だが、助けてくれない中国人夫の姿を見て離婚を決めた。娘はひどいアトピーで、治療を続けていたが、再発を繰り返していた。そんなときに出合ったのが、「自然療法」「クレイ」「薬膳」だった。
熊田さんは「代替療法があることを知ってほしい」という思いで、日本のエーゲ海・岡山県瀬戸内市にある牛窓で薬膳カフェを開くことを目指す。「地方には魅力がたくさんある。地産地消にも取り組み、地域を活性化できれば」と語った。
■相談したい内容を「自分手帳」にまとめる
「相談したいことはあるのに、相談したいことが分からない。相談窓口でいやな言葉を掛けられたことはありませんか」
そう問いかけるのは、松田めぐみさんだ。「言いたいことがたくさんありすぎて、自分の意見をまとめきれず、うまく伝えられない。担当者が代わり、一から説明することが何度もある。一方で、相談を受けている側も悩みがあることを知った」
そこで、松田さんは自分についてまとめる「自分手帳」を提案する。相談窓口との共有ツールとして活用することで、互いのストレスをなくし、適切なアドバイスを受けられるようにする。
「自分の洗い出しからキャリアアップにつなげ、経済的な自立を支援する仕組みを構築したい」(松田さん)
日本シングルマザー支援協会は、「お金を稼ぐ力を養う」「共感しあえるコミュニティ」「再婚という幸せ」を3つの柱に、シングルマザーの自立支援を行っている。江成道子代表理事は、「できることを探していくという思考が大切。120万人いるシングルマザーの背中をこれからも押していきたい」と語った。