フランスの郵便局の屋上で野菜や果物を有機栽培する動きが広がっている。きっかけは、パリ18区の郵便局の屋上でパーマカルチャーを計画した郵便局職員のグループが、パリ市の都市農業推進プロジェクトで入賞したこと。パリ市が応援したことで、郵便局からも屋上の使用許可が下りた。グループはNPOを作り、栽培を始めた。今後は他の地域で同様の活動をするグループと連携する。(羽生 のり子)
パリ18区の中央郵便局で屋上栽培をすることを思いついたのは、郵便局員のNPO「郵便配達人・種」だ。会長のソフィー・ジャンコウスキー氏は、「1年前に屋上栽培をするアイデアが出て、有志4人でNPOを作った。農法を学び、食料の自給自足を目指す。私自身は、パーマカルチャーのパイオニア、福岡正信氏が考案した粘土団子を、街を花で満たすために子どもたちと作ったことがパーマカルチャーに目覚めるきっかけだった」と話す。
退職した元郵便局員で菜園経験のある2人を農業者として雇い、それに30~40人のボランティアが加わって活動する。900平方メートルの屋上には、野菜・果物・ハーブを栽培し、採れた作物は郵便局員や近くのレストランに販売する。鶏小屋を作って卵を生産し、ミツバチの巣箱を置いてハチミツも作る予定だ。
屋上では現在、トマトやズッキーニが実り始めている。クラウド・ファンディングで集めた2万ユーロ(約260万円)が資金になった。パリ郊外のオルセーの郵便局からは「同じようにやりたい」という反応があった。今後は他地域の郵便局と連携して連絡網を作るという。
地球温暖化を防止すると同時に、都市で食料を自給するため、パリ市は2016年1月、2020年までに市内の建物の壁や屋上に緑地7割、農地3割で100ヘクタールの緑化地帯を作る目標を掲げた。同年、「パリの栽培者」を意味する「パリキュルテール」という名称で、都市有機農業プロジェクトを募集したのはそのためだ。呼びかけに応じて、69のプロジェクトが集まった。18区の郵便局屋上栽培は、入賞した33のプロジェクトのうちのひとつだ。100ヘクタールの緑地が出現すれば、パリの風景は変わるだろう。