食文化を通じて地方の価値を発信する野外レストラン「DINING OUT」は、2012年から全国各地で開催している。美しい景色を舞台に、有名シェフが地域の食材を使った料理を提供する地域資源を使った「おもてなし」は人気で、高額なチケットにも関わらず毎回完売。地方創生のひとつとして自治体から開催依頼が増えている。最近は海外からの問い合わせもあり「地域と海外を結ぶプラットフォームになることが目標」とONESTORYの大類知樹社長は話す。(松島 香織)
ONESTORYは、10月26日27日の二日間、愛媛県内子町で「DINING OUT UCHIKO with LEXUS」を開いた。国の重要伝統建造物群保存地区に指定された八日市・護国地区の通りにテーブルを並べて、栗や卵、イノシシなど内子町の食材を中心に使ったフレンチ料理を提供。内子町や周辺地域の住民約100人が運営スタッフとしてボランティアで参加した。
内子町町並・地域振興課の岡田誠司さんは「地元で表に出ていない資源を発信したかった」と話す。町会議員でDINING OUT UCHIKO実行委員会副委員長を務める大西啓介さんは「運営ノウハウがとても勉強になった」と話した。調理や接客に関わったボランティアスタッフは飲食店従事者が多く、レベルアップしたという。
メニューを考案したLa Cimeの高田裕介シェフは、そんな住民の意識の変化がとても嬉しかったという。試作品を作る際、厨房担当の住民スタッフは、ピンセットで花を盛り付けるシェフの姿を見て、翌日ピンセットを購入して持ってきた。「自分で『考える』事がとても大切。何かを生み出そうというきっかけになれば」と話す。
LEXUSは、地域の価値を創造し五感で体験することを提唱するDINING OUTの理念に共感し、2013年の第2回目からオフィシャルパートナーとなった。だが、開催地で車の展示をしたり、オーナーを招待したりはしていない。ONESTORYの大類社長は、「トップブランドとの共催の在り方として、とても良い関係。LEXUSという名前が、今後内子町のプライドになるはず」と話した。
ホストを務めた東洋文化研究家のアレックス・カーさんは、内子町を古い建物を保存している先駆者と評価しつつ、良さを生かしきれていないと話した。「日本は看板が多い。工事中の場所も多く、もっと景観を大事にするべき」と指摘した。
内子町は、ディナーコースの最後を飾った特産の銀寄栗のエクレアを、高田シェフ監修のもとに商品化。道の駅や町内の菓子店で12月25日まで販売する。