復興に向けた「まちづくり」「ひとづくり」

いわて三陸復興のかけ橋プロジェクトによる「第6回岩手かけ橋共創ネットワーク会議」(2017年度第2回)が2月7日、東京都千代田区のNagatacho GRIDで開催された。会議には復興支援事業を行っている首都圏の企業34社と、県関係者を含む約70人が出席し、岩手県内での支援事例の紹介や意見交換が行われた。(一般社団法人RCF=荒井美穂子)

首都圏の企業34社が会議に参加した

■躍動する地域から仕掛ける「まち・ひと・しごと」

2015年度から年2回東京で首都圏企業を対象に行われている「岩手かけ橋共創ネットワーク会議」。東日本大震災からまもなく7年。多くの企業が支援継続のための意義を模索しており、支援の規模を縮小した企業も少なくはない。

その一方で、ハードだけでなくソフトも含めた「まち」の復興は、ハード面の建設事業が落ち着いたこれからが本番であると実感し、地域の実情と企業の経済性の間で悩んでいる担当者も多い。

異なる立場の企業が集まり、復興支援の事例を紹介し合うことは、復興支援が企業にもたらす「数字に表れない実益」の共有を促し、支援継続への後押しとなるだろう。

そのような背景を踏まえ、今回は、「躍動する地域から仕掛ける『まち・ひと・しごと』〜岩手での共創へのチャレンジ〜」をテーマに開催された。

■被災地で進む「まちづくり」「ひとづくり」

第一部前半では、県担当者より復興の進捗状況及び県内での取り組みについて報告がなされ、後半では企業、地域・自治体が取組事例を紹介した。

大船渡市災害復興局佐藤大基氏からは、地元の人たちが参加する「まちづくり」として、昨年春にオープンした商業エリア「キャッセン」の取り組みについて、マルゴト陸前高田からは、首都圏企業の人材研修受入れなど、被災地だからできる「ひとづくり」につながる事例が紹介された。また企業の取組事例として、富士ゼロックスから遠野市での取り組みが、日本IBMからは釜石市での取り組みがそれぞれ紹介された。

■企業が地域に関わる意味とは

第二部でのパネルディスカッションでは、大船渡市佐藤大基氏、富士ゼロックス樋口邦史氏、日本IBM塚本亜紀氏、RCF藤沢烈が「企業にとって地域に関わる意味とは」、「企業が社会性と経済性を両立するには、といった観点で意見交換を行った。

両社からは「地域との関係性づくりの重要性」についてコメントがあり「企業側・支援側がつくりこんでプロジェクトをリードするのではなく、最初の時点でいかに地域の人たちと接点を持ち、関係性を強化するかが、その後のプロジェクトの推進力に大きく関わってくる」といった意見が出された。

また、佐藤氏からは「短期的な成果にとらわれすぎると『できない』という思考に傾きがちで、最初は成果にとらわれすぎずにチャレンジと検証をつみかさねてゴールをめざしていくこと」がポイントとして挙げられた。

このようなポイントは企業内におけるプロジェクトの運営やイノベーションの創出に関しても共通してあげられるポイントであり、支援が支援にとどまらず、企業にとって普段の業務の中では得られにくい部分での学びや企業文化の熟成の場となる可能性を示していると言えよう。

地域の可能性に期待している企業からは、「地域との関係性を構築する上で、企業、地域、行政のそれぞれの言葉を翻訳してコミュニケーションを促す人材が必要」「今後もビジネスとしての持続性を模索したい」などの感想が聞かれた。

被災地から日本全国の「地域」を見据えつつ、企業の社会的役割と経済的な持続性を両立させる取り組みが必要だ。

◆いわて三陸復興のかけ橋「復興トピックス」

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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