テレビは視聴者にSDGsを伝えることができるか

国連広報センターの根本かおる所長が以前、「一部の新聞を除いては日本のマスメディアのSDGs(持続的な開発目標)に対する関心は低く、ビジネス界のほうが先を行っている」と言っていた。それが私の頭の中にずっとあり、一つの番組が生まれるきっかけになった。(フジテレビCSR推進室・木幡 美子)

電通が10代〜70代の男女1400人を対象に実施した調査によると、SDGsの認知率は14.8%と決して高くはない。ただSDGsの17の目標テーマを提示した上で共感するかしないかを問うと、「共感する」と答えた人は73.1%と高く、「理解が進めば今後のアクションにつながっていく可能性がある」のだ。

また、30%が「SDGsを取り入れている企業には信頼感・好感を持ちやすい」と回答しており、企業のイメージアップにもなりそうだ。(2018年4月電通「SDGs に関する生活者調査」より)

【SDGsロゴ(日本語表記)】

社会課題の解決をめざすと同時に企業のブランドイメージがアップするのなら、企業にとっては何かするべき、と考えるのが当然だろう。実際、多くの企業がそれぞれの強みを活かして、SDGsに取り組み始めている。

そんな中、テレビ局は一体何をすれば良いのだろうか。テレビの「強み」は、正確な情報を映像とともに広範囲に発信する力ではないのか。

テレビは「オールドメディア」などと言われているが、電車の中で学生さんたちが「あ、それテレビでやっていたよ!」「あー私も見た。なんか最近、流行ってるんでしょ」など話している光景を見ると、まだまだテレビは捨てたものではないと思う。

「テレビで放送していた」とは「メジャーな存在として広く認知され始めている」とほぼ同義語だろう。

トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩・最高指導者の歴史的会談は多くの日本人がテレビで見た。

また、ロシアW杯日本対ポーランド戦をテレビで見た人も多いと思われる。「23時キックオフ」と深夜にもかかわらず、最高で44.2%の高視聴率だった。

そんなテレビの特性を考えると、SDGs自体を世の中に知ってもらうために、SDGsを全面に出した番組をやったらどうだろうか。

それにより、「SDGsって今流行っているんでしょー」となれば嬉しいし、さらに自分事として捉えてもらい、何か考えるきっかけ、アクションを起こすきっかけになればもっと良い。それが、テレビが果たせる社会的責任ではないか。

そんな想像をしていると、これまでに出会った課題解決に取り組む個人や団体が次々と頭に浮かんできた。そういえば彼らは、自分たちの活動をもっと知ってほしいと言っていたなぁ…。

そうだ!それぞれのゴールに向かって情熱を持って活動している人をレギュラー番組で毎週紹介し、何番のゴールをめざしているのか、アイコンを画面に出したらどうだろう。そんな企画に有難いことにこれに賛同して下さるスポンサーが現れ、放送が決まった。

【フューチャーランナーズ~17の未来~】

冒頭で紹介した根本かおるさんは国連広報センターに転職する前、日本の民放テレビ局に勤務していた。

この番組について「私たちが知る限り、SDGsを取り上げる地上波のレギュラー番組は日本で初めて。日曜日の夕方という家族でテレビを見る時間帯にシリーズで流れるということは画期的なこと」と期待を寄せた。

さらに、SDGsの普及・推進の旗を振る国連ニューヨーク本部の広報責任者のジェフリー・ブレズ氏とも根本さんを通じて知り合った。

偶然にもジェフは、若いころフジテレビでスポーツの仕事をしており、当時アナウンサーとしてスポーツ番組の司会を務めていた私と何度も中継で掛け合いをしていたのだ。わが社との深い縁を感じる。

【左から 国連広報センター所長 根本かおる氏/筆者/国連広報局エンタメ連携担当課長 ジェフリー・ブレズ氏】

まさにこれは、【目標17】の「パートナーシップで目標を達成しよう」と言えるのではないか!というくらい、たくさんのつながりがあって、新しい番組がスタートした。

たとえ一人ひとりのアクションは小さくても、それが集まればきっと未来を変える力になる。

この番組をきっかけにこのパートナーの輪に視聴者が加わったとき、どんな渦が生まれるのか、楽しみだ。ぜひ子どもたちや若い世代にも見てほしい。

『フューチャーランナーズ〜17の未来〜』
番組HPはこちらからご覧いただけます。

毎週日曜17:25〜17:30
(BSフジで7月14日より毎週土曜21:55〜22:00放送)

◆木幡 美子(こばた よしこ)
上智大学外国語学部英語学科卒業
1989年フジテレビにアナウンサーとして入社
2011年よりCSR担当
その他、内閣府男女共同参画会議女性に対する暴力に関する専門調査会委員
厚生労働省疾病対策部会臓器移植委員会委員などを担当

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