フジテレビ・阿部知代さん「生産性なんて関係ない」

雑誌「新潮45」でLGBTなどの性的少数者について「彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がない」と書いた杉田水脈議員の主張に批判が集まっている。フジテレビ報道局勤務の元アナウンサー・阿部知代さんがオルタナに寄稿してくれた。

『生産性』なんて関係ない-人は生きているだけで価値がある

『生産性』という語が話題になりました。「(LGBTは)子供を作らない、つまり『生産性』がない」という文章が元なので、ここでの『生産性』とは「子どもを作ること」のようです。

このサイトをお読みの方はよくご存知と思いますが、子どもがいるLGBTカップルは存在します。

筆者の友人であるFtM(出生時に割り当てられた性別が女性で、性自認は男性)と女性のカップルは、共通の親友から精子を提供してもらい女性は妊娠中ですし、去年アメリカでは性別適合手術を受けていないFtMが男性のパートナーとの子どもを出産。妊娠中に、髭の生えた男性が笑顔で大きく膨らんだお腹を見せた画像は話題となりました。
「たまたま妊娠できる男性だった」

また、子どもを「作らなくても」、去年大阪市では、同性のカップルが虐待などを理由に親元で育てられない子どもの「養育里親」に初めて認定されています。

今年5月 渋谷で行われたレインボーパレードの様子

誤解の無いように書きますが、「LGBTにも子どもがいるから『生産性』がある」と言っているのではありません。

当然のことながら、全ての人には生まれながらに「人権」が保障されいて、何人もそれを侵害できません。

また、憲法14条では「人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と法の下の平等が明記されています。同じく13条には「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」とあります。

子どもがいない人のために税金を投入すべきでないという考え方や、これも最近報じられた、女性だから入学試験の点数を一律に減らされる不文律は人権侵害であり、許されるものではありません。

今年5月 レンボーカラーにライトアップされたフジテレビ本社

一方で、『生産性』を「働いていること」と捉える意見もありました。

確かに「勤労」は国民の三大義務のひとつに挙げられています。しかし上記の通り、「人権」は生まれながらに保持しているもので、義務を果たしたから与えられるものではないのです。「生み出さない人を支援すべきでない」という考え方は、働きたくても働けない人、高齢者や障害者の人権も無視していると言わざるをえません。

LGBT当事者で弁護士である友人は、こう言っていました。

「社会は未熟だから、悲しいかないろんな不合理や不自由がある。でもそれを『よくあることだ』と、そもそもの前提にして問題の解消を放棄したら、『人は同じ存在である』ということすら否定することになる」

TOKYO RAINBOW PRIDEのイベントステージ

『生産性』なんて関係ない。人は生きているだけで素晴らしいし、価値があります。

最近の複数の事象が多くの人により議論されることが、LGBT当事者や、障害者や高齢者や女性への人権侵害をなくす一歩に繋がると信じています。

◆阿部知代(あべ ちよ)
上智大学文学部新聞学科卒業
1986年フジテレビにアナウンサーとして入社
ニュースからバラエティまで幅広く担当する一方、
パリとNYに赴任、2015年より報道局所属
LGBTアライとして東京レインボープライドや各種
メディアで情報発信する
ユニバーサルマナー検定2級

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