サステナビリティ経営の質を見極める 2

ESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGsなどが注目され、企業の取り組みも進んでいます。本当にその企業が社会・環境にしっかり配慮しているのかを見極めるのは至難の業です。CMがキャッチーだから、いいプロジェクトをしているから、報告書のデザインがいいから、といったことでなんとなく良い印象を持つ、ということも多いでしょう。今回は、10年ほど企業の情報開示を支援させていただいた経験から、サステナビリティ(CSR・社会環境)報告を使って企業の社会性を読み解くポイントについていくつか挙げさせていただければと思います。(中畑 陽一)

*なお、こちらに述べさせていただく意見は、飽くまで私個人の見解となります。また、最近はWEBも含めて開示する方向にあるため、「報告書」ではなく「報告」とさせていただきます

・SDGs

最近は貧困・飢餓・ジェンダー・資源・格差など世界的な17の課題解決に取り組むSDGs(サステナビリティ開発目標)への取り組みが増えています。これらを大々的に取り上げて取り組む姿勢は評価されるべきだと考えます。しかし問題は実質的にそれらを経営目標に落とし込んで、モニタリングしているかどうかだと思います。

ひとつの活動だけ、商品だけ、プロジェクトだけでPRするのではなく、経営として、現場レベルとしてそれを意識した取り組みをしていけるかが課題だと思います。

こちらも、GRIなどと同様、その為に報告をするのではなく、社会と企業の持続可能性創出や課題解決のため、自社の理念やビジョン、状況を鑑みながら、それらを「重要なステークホルダーのニーズを把握し、それに対応するためのフレームワーク」として活用できているか、だと思います。

・人権
憲法の重要理念に基本的人権が定められているにも関わらず、企業活動における人権への対応は欧米に比べて遅れているとよく聞きます。しかし、グローバル企業の活動の課題においても、人権に関する問題は最重要課題の一つであり、むしろサステナビリティの本流だと思われます。

資源・食品・衣料を始めとするサプライチェーンの上流の問題は、原材料や商品を採掘・生産する現場での過酷な労働環境、児童労働、地域コミュニティの破壊などが重大な問題として共有されています。

今やあらゆる分野でグローバルにサプライチェーンが構築されており、私たちの生活も、そうした人々の犠牲に成り立っているシステムを変えていかなくてはならないということです。

そのような観点で、人権問題がサプライチェーン上で発生していないかどうか、管理されているかどうかを把握・対応して、報告することが重要になってきています。

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中畑 陽一(オルタナ総研フェロー)

静岡県立大学国際関係学部在学時、イギリス留学で地域性・日常性の重要性に気づき、卒業後地元の飛騨高山でタウン誌編集や地域活性化活動等に従事。その後、デジタルハリウッド大学院に通う傍らNPO法人BeGood Cafeやgreenz.jpなどの活動に関わり、資本主義経済の課題を認識。上場企業向け情報開示支援専門の宝印刷株式会社でIR及びCSRディレクターを務め関東・東海地方中心に約70の企業の情報開示支援を行う。その後、中京地区での企業の価値創造の記録としての社史編集業務を経て、現在は太平洋工業株式会社経営企画部にてサステナビリティ経営を推進。中部SDGs推進センター・シニアプロデューサー。

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