「地球気温上昇、2度と1.5度では大違い」NGO警鐘

現在、温暖化防止に向けて、化石燃料への依存度が高いエネルギーシステムや経済から自然エネルギー社会への転換を求める市民活動が世界中で活発化しています。とりわけ、世界中で新規の石炭火力などの化石燃料インフラ計画の中止を求める活動が多く展開されています。国際環境NGO 350.orgはそれらの動きを紹介する資料「People’s Dossier on 1.5℃(1.5℃目標に向けて動く世界の市民)」を発表しました。(国際環境NGO 350.org)

このたび国際的な専門家が地球温暖化についての科学的な研究を進めるIPCC(国連気候変動政府間パネル)から、地球の平均気温が1.5℃または2℃上昇した場合の影響をまとめた、とても重要な特別報告書が発表されました。

気温上昇1.5℃と2℃は、2015年に制定された温暖化に関する国際条約パリ協定に掲げられている「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力」をするという目標と結びついています。発表された報告書は気温上昇を1.5℃に抑えた方が地球環境や人類にとって著しく好ましいことを指摘しています。

IPCCの特別報告書は地球の産業革命前と比べ1.5℃上昇した場合の影響およびそれ以上の気温上昇を回避できるのかを詳しく検証しています。各国が掲げている「NDC(2020年以降の温室効果ガス削減目標)」がすべて実施されても3℃以上の気温上昇が予想されます。世界の気温上昇を1.5℃に抑えることは、地球環境のさらなる崩壊を防止することを意味します。

現在排出されているCO2の20~30%が数百年から数千年ほど大気中に残ることを考慮すると、気温上昇を1.5℃に抑えた場合、2100年以降に温暖化の影響から一部の生態系が部分的に回復することを可能になります。IPCCの特別報告書はただちに石炭、石油、ガスなどの化石燃料からの速やかな脱却および自然エネルギーと省エネルギー技術の導入が急激に進められれば1.5℃の目標を達成することは可能だと示しています。

350.orgは「People’s Dossier on 1.5℃(1.5℃目標に向けて動く世界の市民)」を公開

IPCCの報告書発表に合わせて、脱炭素社会への急速な転換を求め、石炭、石油、ガスなどの化石燃料からの速やかな脱却を目指し活動をしているコミュニティに焦点をあてるため、350.orgは「People’s Dossier on 1.5℃(1.5℃目標に向けて動く世界の市民)」を公開しました。海面上昇のリスクにさらされている太平洋の島国諸国の人々から石炭による健康被害に抗うアフリカのコミュニティまで化石燃料プロジェクトの停止を求め動いている、まさに世界中の様々なストーリーが含まれています。

日本からは、神戸における2つの新しい大規模石炭発電所の建設計画を抗議している市民団体「神戸の石炭火力発電を考える会」の活動が取り上げられています。

IPCC報告書の中の気温上昇を1.5℃に抑えるためのCO2排出削減の道程において、最も達成可能なシナリオでも2030年までに石炭火力の使用量を78%削減、2050年までに97%削減が必要だと言及されています。

日本国内では、1.5℃の目標達成とはまったく逆行するかたちで、35基もの石炭火力発電所の新設計画が進んでいます。また、政府のみならず日本の金融機関がパリ協定以降、国内外の石炭火力発電所の新設に関わっている企業への融資を増加させていたことが判明しています。

気温上昇を1.5℃に抑えるには日本は脱石炭への舵を大きく切る必要があります。来年のG20議長国である日本のエネルギー政策は世界に注目されていて、今までの方針に変更がない限り厳しく評価されるでしょう。

「People’s Dossier on 1.5℃(1.5℃目標に向けて動く世界の市民)」

 

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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