日色 保(ジョンソン・エンド・ジョンソン代表取締役社長=肩書は当時)

「企業は顧客、社員、地域社会、株主に対して責任をもたなければならない」。ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)の「我が信条(Our Credo/クレドー)」はビジネスにおけるあらゆる場面で判断基準になっているという。「良い会社」とはどうあるべきか、日色保社長に経営論を聞いた(聞き手:森 摂=オルタナ編集長、吉田 広子=同副編集長、写真=福地 波宇郎。日色氏の肩書は2018年7月の取材当時)
――今、サステナビリティ(持続可能性)や働き方改革を含め、「良い会社とは何か」が問われています。J&Jのクレドーは、世界で最も有名なミッションステートメントの一つです。クレドーは、社員にとってどういう存在ですか。
クレドーは当社にとって一番大事なもので、心臓であり、背骨であり、そして「求心力」です。全ての社員が、ここを目指していけば間違いないという確かな指標です。当社はカリスマが引っ張っているのではなく、クレドーが全社員の求心力になっているのです。
――米国本社CEOもカリスマ的ではないのですね。
偉大なCEOもいますし、ビジネスを大きくしたCEOもいます。しかし、CEOの名前が前面に出ることはあまり無いです。
クレドーはCEOよりも価値が高いのです。CEOも事あるごとに「クレドー」と言っています。現CEOが社員の前で話をする時も「我が信条」という言葉が出ないことは絶対にありません。
ウィリアム・ウェルドン前CEOに「どのくらいクレドーに関連したことに時間を使っているか」を聞いたことがありました。答えは「30─40%」でした。相当の時間を割いています。
――人事や営業、マーケティングなど全ての業務においてクレドーがかかわるのですね。
クレドーを企業理念やミッションステートメントととらえる人が多いのですが、当社では「クレドーはビジネスドキュメントである」と言っています。
前CEOは「クレドーはただの理念ではない。ビジネスをどうドライブしたら良いのかが書いてある。そういった意味でクレドーはビジネスドキュメントだ」と言いました。
「クレドーは、ビジネスの現場から遠い所ではなく、近いところにある。自分の時間の100%をクレドーに使っているとさえ言っても良い」と強調していました。
■利益優先ではいけない