COP10で問われる日本の手腕

世界的に損失が続く生態系の保全策や、自然資源の持続可能な利用について話し合う生物多様性会議が10月11日、名古屋市で開幕した。会議の口火を切る形で、初日から15日までは遺伝子組み換え生物の扱いに関するカルタヘナ議定書第5回締約国会議(MOP5)が開催される。

同議定書は遺伝子を操作した生物が生態系に悪影響を及ぼさないよう、輸出国の事業者が輸入国の事前同意を得ることや、輸入国が安全性を評価することなどを定めている。生物多様性条約の下で2000年に採択され、2003年に発効した。しかし被害が発生した際の責任と補償のあり方については議論が残され、交渉が続く。日本を含む160の国や地域が批准したが、遺伝子組み換え作物の主な生産国である米国やアルゼンチンなどは批准していない。

また補足議定書では、組み換え生物による被害に際して輸入国が事業者に原状回復やその費用を求めることができるよう、補償措置の新たな枠組みを定める。これについては今回の本会議の直前まで開かれた事前会合で、合意文書案がまとまっている。

MOP5で議長を務める日本の鹿野道彦農水相は開会式で「条約と議定書の意義を世界に発信していきたい」とあいさつした。

18日からは、生物多様性保全の国際目標や遺伝資源の利益配分を話し合う生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開かれる。政府や企業、市民団体など約8千人が参加する。

同会議では遺伝資源の利用と利益配分を定める「名古屋議定書」の採択に加え、開発で劣化している生態系の保全策や2020年に向けた生物多様性の保全についての目標設定が主な課題となる。

微生物や動植物、さらにそこから派生する遺伝子や材料などの資源を巡っては、途上国が先進国の企業に医薬品開発などで得た利益を還元することを要求し、これに加えて特許申請時に遺伝資源の原産国を開示することも求めている。先進国は「企業活動を阻害する」などと反対しており、事前合意には至っていない。

議定書が採択できるかどうかは閣僚級会合(27~29日)次第になりそうだ。各国の利害が絡み合う厳しい交渉が予想され、議長国を務める日本の手腕が試される。(石井孝明=オルタナ編集部)10月12日

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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