セイコーエプソン社長「なくてはならない会社へ」

プリンターメーカーとして、世界にその名を轟かすエプソン。「省・小・精の技術」に基づき、革新的なものづくりを続けてきた同社が、「サステナブル・ブランド国際会議2019東京」で、あらためてイノベーションを語った。その要旨をお伝えする。

セイコーエプソン・碓井稔代表取締役社長

エプソンが創業時から大切にしてきた理念、それは「誠実努力」です。創業者の山崎久夫が目指したことは、お客様に喜んでいただけるものを提供すること。当時創業者が取り組んだのは「遅れない時計」をつくることでした。

やがて当社が創り出した卓上型水晶時計が、スイスで開催された国際コンクールで入賞。この時、エプソンに「やり遂げる気風」が誕生したと言ってもよいでしょう。

エプソンの本社には今でも「誠実努力」の文字が刻まれた記念碑が建っています。

■理念から生まれた成果

エプソンの時計づくりにかける誠実さはその後、世界初のクオーツウオッチや、世界初の小型軽量プリンターを生み出すことになります。

これらが現在のエプソン発展の礎となっているのです。

そして、もう一つ大切な理念があります。それが「地球を友に」という言葉です。諏訪湖の神秘的な自然現象として知られる「御神渡り」をご存知ですか。厳しい冷え込みが続くと発生する、この「御神渡り」も温暖化の影響で近年は発現する年が減少傾向にあります。

豊かな自然に囲まれた諏訪湖畔で事業を育んできた我々にとって、地域の環境に負荷を与えないことは、創業当時からの使命でした。  

その思いは代々引き継がれ、1980年代には世界に先駆けてフロン全廃を宣言し、そこからわずか5年で全廃を達成しました。

そして1990年代に入り、エプソンは大きく発展を遂げます。プリンター事業、プロジェクター事業、デバイス事業と飛躍的に事業を拡大し、会社規模もそれにつれて大きくなっていきました。

その一方、利益は下降傾向。そこで我々は気づいたのです。競争に奔走するあまり、真にお客様が求めているものを見失っていたことを。

■お客様価値の再認識

そこから我々は創業時の理念に立ち返り、真のお客様価値を追求する姿勢を取り戻しました。お客様をすべての起点とした事業活動を、経営の中心に据えたのです。すなわち社会にとって「なくてはならない会社」になることです。

お客様が真に求めているものはなにか? それを追求し、実現させていくことで、低迷していた業績も回復しました。自らの常識やビジョンを超えて果敢に挑戦し、イノベーションを生むことで、画期的なお客様価値を継続的に創造し続ける。これが当社の目指す姿であり、経営理念や長期ビジョン「Epson 25」の根底に流れる考え方となっています。その実現こそが、エプソンの存在価値であり、持続可能な社会の実現への貢献となると確信しています。

■新たな価値の創造に挑戦

エプソンは「なくてはならない会社」になるために、イノベーティブな製品を世に送り続けています。

世界のオフィスから排出されるCO2や省エネルギー問題を解決し得る「高速ラインインクジェット複合機/プリンター」や、世界で初めて水をほとんど使わない製紙方法を成功させた乾式オフィス製紙機「PaperLab」は、その最たるものです。私たちエプソンが、なくてはならない企業として認められ、その活動の結果が、持続可能な社会の実現に繋がると信じて、新しい価値の創造に挑戦してまいります。

◆セイコーエプソン株式会社

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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