投資家との適切なESGコミュニケーションとは

最初に井垣勉氏(オムロン執行役員グローバルインベスター&ブランドコミュニケーション本部長)より同社の取り組みが紹介されました。同社は情報開示およびステイクホルダーとのコミュニケーションに積極的であることが評価され、2017年には経済広報センター主催「第33回企業広報賞」における「企業広報大賞」を受賞した企業です。

創業以来、事業を通じて社会の発展に貢献することを成長の原動力にするべく、「われわれの働きでわれわれの生活を向上しよりよい社会をつくりましょう」という企業理念を日々の仕事で実現する仕組みづくりを進めてきました。

10年ごとの長期ビジョンを掲げ、事業を通じて社会的課題を解決すること、公正かつ透明性の高いガバナンスをグローバルに運用すること、すべてのステイクホルダーと責任ある対話を行い強固な信頼関係を構築することを経営のスタンスとしています。すなわち、ステイクホルダーとの対話は企業理念の実践そのものです。

製品・サービスなど本業を通じて社会づくりに貢献するバリューチェーン、取引先や社員・地域社会なども含めたサプライチェーン、社会から集めた資金で行われる投資活動にリターンを返していくインベストメントチェーンの3つのチェーンをしっかり回すことによってステイクホルダーと対話し、よりよい社会をつくることになるといいます。

いまは、2020年までの長期ビジョンにおける最後の中期経営改革(2017~2020)のさ中にあり、事業成長とサステナビリティ推進の統合のためSDGsと紐づけて2030年からバックキャストし、社会的価値の創出のための取り組みを特定し、2020年目標(定量的・定性的目標)とKPIを設定しています。

井垣氏は、ESG投資やSDGsがドライバーとなってコミュニケーション活動に変化が起きていると指摘しました。市場では、2017年よりGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)によるESG投資が拡大する中、非財務情報に対する投資家ニーズが高まっています。これを受けて対話のあり方としても、過去の業績(財務情報)をリアクティブに開示するという形から、将来的な企業価値創造をめざして非財務情報も含めプロアクティブに対話を行うという形になっているということです。

そこで企業と市場の対話の質向上のため、普段は対外的に話をする機会が少ない人事・品質管理・法務などの担当役員からも話をするESG説明会を開催したり、研究開発強化の背景や成果につき様々なメディアや機会を組み合わせてステイクホルダーに発信したり、Dow Jones Sustainability Indicesなど評価機関によるアセスメント対応を行ったりといった取り組みを進めているということです。

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齊藤 紀子(企業と社会フォーラム事務局)

原子力分野の国際基準等策定機関、外資系教育機関などを経て、ソーシャル・ビジネスやCSR 活動の支援・普及啓発業務に従事したのち、現職。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了、千葉商科大学人間社会学部准教授。

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