次に鳥光健太郎氏(KDDIサステナビリティ推進室長)より同社の取り組みが紹介されました。同社はGPIFによる投資先企業として金額規模で1位(274億円)を獲得した企業です(2017年7月3日 大和証券発表のデータによる)。

社内にサステナビリティの考え方を浸透させる上で、かつては社員教育のためのeラーニングや講演会、社外への情報発信などボトムアップアプローチをとっていましたが、限界に直面したといいます。

そこで2016年3月トップダウンアプローチとしてサステナビリティ委員会を設置し、経営層に自社の活動全般、世の中の動向や他社の秀逸事例、今後のサステナビリティ活動の方向性を共有するなど、経営層の関与を確保しました。そして企業理念「KDDIフィロソフィ」に基づくサステナビリティ活動として、ICT企業ならではのノウハウを活かした社会的課題解決を図っています。

サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)の選定にあたっては、事業活動に関わる様々な課題の中から、社会的関心が高く、かつ同社が社会とともに持続的成長を目指すための6つに絞りました:安全で強靭な情報通信社会の構築、情報セキュリティの確保とプライバシーの保護、多様な人材の育成と働きがいのある労働環境の実現、エネルギー効率の向上と資源循環の達成、ICTを通じた心豊かな暮らしの実現、人権尊重と公正な事業活動の推進。これらはステイクホルダーからの評価、社会経済に与えるインパクト評価、第3者有識者からのコメントを経て経営会議で承認され、各課題には担当部署がついて活動を推進しています。

鳥居氏は同社のESGコミュニケーションについて、2018年3月に初めて開催したというESG説明会と個別面談の状況を説明しました。ESG説明会ではESG投資家を対象に、これまでの取り組み、外部評価、今後の展望などについてE/S/Gの各責任者から講演および質疑応答などを行い好評だったということです。また2017年度には投資家との個別面談件数が一気に増加したということです。

続いて牛島慶一氏(EY新日本有限責任監査法人気候変動・サステナビリティサービスCCaSSリーダー プリンシパル)より、日本企業はまだ本質的なESG対応ができていないこと、表面的対応に陥らないためには日常業務に落とし込み言動一致を図る必要があることが指摘されました。

また、欧州金融機関がアジアに回帰していることを背景に、2015年頃からインドやシンガポールなどASEANの一部の証券取引所ではESG情報の開示に関するルールやガイダンスをもって上場企業に開示を求めていることが紹介され、ESGを要因として市場から排除される企業/参入する企業もある現状と、情報開示の質を上げる必要があることが指摘されました。

松本加代氏(経済産業省経済産業政策局企業会計室室長)からは、長期的な企業価値向上に向けた企業と投資家の対話を促進する同省の取り組みが紹介されました。機関投資家は短期主義に陥らずに企業の長期的成長のためにどう投資するか考えること、企業は投資家がどのような観点で企業を評価するのか理解し効果的なコミュニケーションを考えることが重要です。

2017年5月に策定された「価値協創ガイダンス」は、企業経営者が経営理念・ビジネスモデル・持続可能性・戦略・KPI・ガバナンスを一つのストーリーとして投資家に伝えるため、また投資家が中長期的な観点から企業を評価し投資判断するための手引書となっています。今後本ガイダンスを企業に活用してもらい改善も図りつつ、企業価値の開示について制度整備を進めていく予定であることが報告されました。

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