◆卵と鶏の話(後編)
海外拠点も含めた組織全体の取り決めとして、調達する卵をすべて平飼い卵に変えるという決定を発表している海外に本社を置くグローバル企業が複数あります。その数はアメリカ国内だけでも450社を超えています。例えばスターバックスコーヒーカンパニーは2020年までに、ペプシコ、マリオットインターナショナル、ヒルトンホテルも2025年までに、界拠点で平飼い卵調達へ移行すると公表しています。

日本でも本社の平飼い卵調達の方針を日本語で公表している企業があります。大手食品製造メーカーネスレ日本、高級リゾーツ&ホテルのフォーシーズンズホテル(丸の内東京、京都)、コントラクトフードでアジアをリードする西洋フード・コンパスグループなどがそうであり、それぞれ2025年を目標としています。日本拠点にも海外本社の方針にコンプライアンスする必要があり、今後も国内企業が次々に平飼い卵方針を発表するだろうと予想しています。
さてその平飼い卵はいったい「どこで手に入る」のでしょうか。
平飼い卵生産者は中小規模経営で大きな販路を持っていないところが多く、大手スーパーチェーンでは大規模養鶏場の卵を扱うところがほとんどで、市場に出ている卵のほとんどが平飼いでないといえるでしょう。
宅配のパルシステム、コープデリ、オイシックスなどでは一部取り扱いはあるものの、平飼い卵しか使わないという所はまだまだ僅かです。
それでも、良い卵とは飼育の段階からこだわるもの、と平飼い卵しか使用しないという経営方針の企業もあります。湯田中温泉プリン本舗のプリンは平飼い卵で作られ、さらに同社の経営するオンラインストア大地の卵では有精卵の平飼い卵を購入いただけます。
消費が与える社会への影響や自分の価値観を考えながら、丁寧に日常生活の中に落とし込める良い食材を揃えている学芸大学のFOOD AND COMPANYも平飼い卵のみ販売。また養鶏場の 関塚農場(栃木県)では平飼い飼育一本で継続されています。同様にWabisuke(京都府)、やますけ農園 (福島県)などは、オンラインストアで消費者が直接に購入することができます。
国内の宿泊施設も変わってきています。沖縄の大型リゾートホテルコスタビスタ沖縄は自社平飼い農場を持ち、お客様に提供する卵はストレスの少ないニワトリから育ったものしか扱っていません。
また福島県にあるリピーターの多い人気宿おとぎの宿 米屋も食材にとことんこだわり、卵は平飼い卵のみ提供。小平市、国分寺市にある卵レストランEggg、そして池袋と東京農業大学前にあるレストランEgg Tokyoも平飼い卵しか使用していません。
家畜飼育の現状を向上するためには、企業、養鶏家、動物擁護活動だけでなく、消費者、研究者、メディアなど多様な層の人たちが参加し、社会の倫理問題として取り組んでいく必要があると考えています。ザ・ヒューメイン・リーグ・ジャパンは大企業との対話を続けていきますが、企業が納得するには、消費者の協力が必須です。
お近くのスーパーに「平飼い卵が欲しい」と伝えていただくだけでも、商品を担当している方の気づきに繋がるかもしれません。
◆上原まほ
ザ・ヒューメイン・リーグ・ジャパンのスタッフ。アメリカの大学で経営管理を学び、同国の大学院で動物擁護と法律を学ぶ。2017年のTHL Japan誕生以来、雌鶏の苦しみを限りなく減らすために、大手食品企業対し平飼い卵調達の働きかけをしている。