中欧で考えた美しいまちと交通(笹谷 秀光)

■中欧主要都市の持続可能な交通システム
オーストリアの国際都市・ウイーンにはCitybikeという自転車シェアシステムがある。人気の高いシェーンブルン宮殿前にも駐輪場がある。自転車用の歩道も相当に整備されている。すでに生活に定着し観光客も使う。最近は電動キックボードのシェアシステムも導入されている。

ハンガリー・ブダペストにはMOL Bubiという自転車シェアがあり、これらは、パリのVelib の仕組みに近い。

路面電車の効果的な活用も進んでいる。ブダペストの路面電車のホームで見かけた「乳母車」の案内図版が面白い。優先乗降のマークだ。チェコ・プラハでは低床型の次世代交通と旧型が併用されていた。

ブダペストの路面電車のホームにて
ブダペストの路面電車

ブダペストには唯一世界文化遺産になっている地下鉄もある。1896年に開業した1号線は、ロンドン、イスタンブールに次いで世界で3番目に開業。電気運転の地下鉄としては世界初である。黄色くて小さな車体で3両編成だ。駅もレトロ感満載であった。

ブダペストの地下鉄1号線

ブダペストの中心部は、「ブダペストのドナウ河岸とブダ城地区およびアンドラーシ通り」という登録名で世界遺産に登録されている。地下鉄は「アンドラーシ通りとその地下」に含まれる(これは日本の世界遺産、熊野古道の沿道にある小さな露天風呂『つぼ湯』が熊野詣の湯垢離場として世界遺産に登録されていることと登録の考え方が近いかもしれない)。

船も、重要な交通システムだ。川と橋が観光名所を形成する。「プラハ歴史地区」(世界遺産)を流れるヴルタヴァ川はチェコの作曲家スメタナが交響詩『わが祖国』で題材とした。この川に架かる石橋「カレル橋」は、その美しいゴシック様式で多くの観光客で賑わい夜のライトアップもきれいだ。

一方、ブダペストの夜景はヨーロッパ随一と言われる。ドナウ川に架かるセーチェニくさり橋の夜景は世界的に有名だ。北から南へ向かってマルギット橋、くさり橋、エルジェーベト橋、自由橋の順でブダ側とペスト側をつないでいる。確かに、夜景を楽しむ船旅は素晴らしい。

ちなみに、これらオーストリア、ハンガリーでは、公共交通機関に対する満足度の指標は昨年に比べ上昇している(チェコは横ばい)。

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笹谷 秀光(CSR/SDGsコンサルタント)

東京大学法学部卒。1977年農林省入省。2005年環境省大臣官房審議官、2006年農林水産省大臣官房審議官、2007年関東森林管理局長を経て、2008年退官。同年~2019年4月伊藤園で、取締役、常務執行役員等を歴任。2020年4月より現職。著書『CSR新時代の競争戦略』日本評論社・2013年)、『協創力が稼ぐ時代』(ウィズワークス社・2015年)。『 経営に生かすSDGs講座』(環境新聞社・2018年)、『Q&A SDGs経営』(日本経済新聞出版社・2019年)。 笹谷秀光公式サイトー発信型三方よし 執筆記事一覧 

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