TICAD7、「横浜宣言2019」採択

横浜市で開催されているTICAD7(第7回アフリカ開発会議)で30日、「横浜宣言2019」が採択された。同宣言では、日本は産業人材の育成や女性向けの教育など人に焦点を当てた支援を行う。(オルタナ総研コンサルタント=室井孝之)

アフリカ連合(AU)議長エジプト・シシ大統領、安倍首相

TICADは、Tokyo International Conference on African Developmentの略で、日本政府の主導でアフリカの開発や支援を話し合う国際会議として1993年に始まった。会議には、アフリカ54カ国の内53カ国が参加し、民間投資拡大や持続可能な社会の推進を議論した。

アフリカの人口は2019年の13億800万人から2050年には24億8000万人となり、世界の4分の1を占める見通しだ。「最後の巨大市場」として世界の注目を集める一方、貧困、治安、インフラ、健康、教育、廃棄物管理など課題も深刻化している。

国際連合広報センター「持続可能な開発目標(SDGs)報告2018」によると、
1.目標3「すべての人に健康と福祉を」では、「2016年の出産年齢女性のHIV感染率は、非感染者1,000人当たり、全世界では0.26人だが、サハラ以南アフリカ2.58人」
2.目標4「質の高い教育をみんなに」では、「全世界の幼児・初等教育参加率は、2010年63%から2016年70%へ改善しているが、サハラ以南アフリカ41%、北アフリカ52%と低い」
3.目標6「安全な水とトイレを世界中に」では、「北アフリカでは、水ストレスのレベルが70%を超え、将来的に水不足が生ずる確率が高い」
4.アフリカに限定されないが、目標2「飢餓をゼロに」では、「栄養不良状態にある人々の割合は、2015年10.6%から2016年11.0%へ、人数では7億7,700万人から8億1,500万人へ再び増加。紛争、干ばつ、気候変動関連災害が原因」
と報告された。

世界銀行の統計では、サブサハラの12カ国で1日1.9㌦未満で生活する貧困層は人口の半数を超えている。

「横浜宣言2019」が示す通り、日本の支援は、「『ABEイニシアチブ』によるアフリカの産業人材6年で3,000人育成」、「3年間で400万人の途上国の女性に質の高い教育の提供」、「『アフリカ健康構想』としてアフリカの300万人に対する保健・医療の実現」と「人」に焦点を当てている。「投資」では、謙虚に長期的視点で共に成長していくのが日本のスタンスだ。

「横浜宣言2019」の実施行動である「横浜行動計画2019」には、「農業生産の強化」「インフラ投資」「再生可能エネルギーへのアクセス」「気候変動の緩和」「廃棄物管理システムの向上」が盛り込まれており、2022年TICAD8でフォローアップされる。

安倍首相は、議長総括として、「日本はTICADに対し、アフリカ各国のオーナーシップを尊重している。国の力は人の力。アフリカの未来を全力で応援する」と締め括った。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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