■航空会社も乗り出したSAF生産工場建設

航空機や重量貨物輸送に使われる再生可能燃料を手がけるヴェローシーズ(本社・英国オックスフォードシャー州)の子会社、アルタルト・イミンガムは8月、欧州で初めて家庭・商業ごみを原料としたSAFの生産プラント建設のための申請書を提出した。これは、ブリティッシュ・エアウェイズ、シェルとの共同事業だ。
リサイクルできないごみを年に50万トン引き取り、触媒反応を用いて、一酸化炭素と水素から液体炭化水素を合成、SAFを製造する。フィッシャー・トロプシュ法と呼ばれるこの技術を導入した場合、従来の航空燃料と比較し、燃料1トンあたりGHG排出量を70%削減することが可能になるという。
工場建設開始は2021年、SAFの商業生産が始められるのは2024年を予定している。ブリティッシュ・エアウェイズ、シェル共に同工場で生産されたSAFを購入する。
デルタ航空は9月、バイオジェット燃料生産施設開設の可能性を探る研究に200万ドル(約2億1,000万円)を投資することを明らかにした。提携先は、USアドバンスド・バイオフューエル(本社・米国メリーランド州)の子会社、ノースウェスト・アドバンスト・バイオフューエルズ。林床に落ちている木々をSAFの原料として用いる実験を計画している。来年中盤には実験を完了させ、結果をもとに今後の方向を検討する。成功であれば施設建設に着手し、2023年末までにSAFが納品される。
■経済・社会面でもメリット
航空業界で取り入れ、定着させることで、GHG削減が期待されるSAFには、ほかにもメリットがある。従来航空機で使用されてきた化石燃料には価格変動がつきものだったが、それがない。常に安定した価格での取り引きが可能だ。
また開発途上国などに経済的効果をもたらす。土壌が食糧生産に向いていなくても、SAFの原材料を生育するのには適している場合があるからだ。原料の精製工場は、産地近くに建設されることが多く、さらに雇用の増加を後押しする。