人間の安全保障に生きた「小さな巨人」緒方さん

吉田内閣で官房長官だった緒方竹虎の息子、四十郎に嫁ぎ、緒方姓となったのである。つまり、元々は国際関係の書物に埋まった外交官の家に生を受けた研究者だったが、国連という実践の場に立つことで世界的な広い視野と対応力、つまりは国際感覚を身に着けたといえるかもしれない。

難民がいなくなり、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が消えてなくなるのが私の夢、とよく口にしていたが、残念なことに紛争と難民は今も絶えることがない。

拙著『国連機関でグローバルに生きる』(現代人文社)の出版にあたり、緒方さんに序文を寄せていただいたが、彼女はその中でこう記している。

「敗戦を経験し世界から孤立した経験を持つ日本は、これからも国際貢献を政策の最優先課題とすべきである。そして、これからの日本を背負う若い人たちが世界の人々のために働こうという意欲を持つことほどすばらしいものはない」

若者が緒方さんの後に続くこと、また、そういう若者を育てることこそが、我々が「人間の安全保障を掲げた」稀代の巨人の遺志に応える道であると思う。

harada_katsuhiro

原田 勝広(オルタナ論説委員)

日本経済新聞記者・編集委員として活躍。大企業の不正をスクープし、企業の社会的責任の重要性を訴えたことで日本新聞協会賞を受賞。サンパウロ特派員、ニューヨーク駐在を経て明治学院大学教授に就任。専門は国連、 ESG・SDGs論。NPO・NGO論。現在、湘南医療大学で教鞭をとる。著書は『国連機関でグローバルに生きる』など多数。執筆記事一覧

執筆記事一覧
キーワード:

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..