インドネシア森林火災と、日本の紙消費・銀行業務

「今年のインドネシアの森林火災、熱帯林・泥炭地破壊の気候インパクト」

今年、インドネシアは再び壊滅的な森林火災に見舞われました。7億トンもの二酸化炭素(CO2)が排出され、日本が去年排出したCO2の約57%に相当します。火災はインドネシアに甚大な損害をもたらし、有害なヘイズ(煙害)が近隣諸国にも広がりました。インドネシアの6州が「緊急事態」を宣言し、学校、空港、企業は閉鎖され、広島県以上の面積に及ぶ85万ヘクタールの土地と森林が燃えました。ヘイズが国際的な環境危機と公衆衛生危機の再発を巻き起こし、インドネシアのジョコ大統領は「国家的な恥」と表現しました。 国連は、5歳未満の子どもの1千万人を大気汚染の危険にさらしているとインドネシアに警告しました。

今年の火災の背景には、熱帯林と泥炭地の持続不可能なプランテーション開発があります。そして、日本での紙パルプとパーム油の消費、さらに日本の金融機関による投融資と密接な関係があるのです。

熱帯林と泥炭地の気候リスク

今年の8月に発表された「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の気候変動と土地に関する特別報告書では、森林減少や農業などの土地利用によるCO2排出量は、世界の人為的な温室効果ガス総排出量の23%であるとしました。そのうち、特に高炭素の熱帯林と泥炭地の役割が注目されました。

インドネシアでの火災が起きた多くの地域には泥炭地が含まれ、泥炭地は1ヘクタール当たり約2,600トンの炭素を貯蔵しています。そのために、アマゾン火災を超える膨大な量のCO2が排出されたと報道されています。インドネシアの泥炭地は深さは様々ですが2250万ヘクタールに及び、その泥炭層には世界の化石燃料利用量の100年分に相当する炭素が蓄積されていると推計されています。

「水の森」と呼ばれる熱帯泥炭湿地林は、成長した木々が枯れても、水分が豊富な土壌では分解されず炭素が蓄積することで、本来は貴重な自然の炭素吸収源となっていました。ところが、近年、パーム油を生産するためのアブラヤシ農園や紙の原料となる木材生産のためのパルプ材植林の開発対象地とするために排水され、乾燥化が進められたことで、地中に蓄積されていた炭素の分解が進んでいます。膨大な量の炭素の排出源となるために「地球の火薬庫」とも呼ばれています。紙とパーム油のための泥炭湿地林開発が火薬庫の扉を開けてしまったのです。

排水によって乾燥化した泥炭地で火災が発生すると、消火は非常に困難です。火はくすぶりつづけ、鎮火には雨季を待つしかない状況になってしまいます。最も被害が大きい州の一つであるスマトラ島のリアウ州では、火災によって36億米ドルの重大な損失が発生したと、最近の調査で推定されています。260万ヘクタールが延焼した2015年の火災では、全国で160億米ドルの損失と損害が発生したと世界銀行が推定しました。

日本のバイヤー企業との関係

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #脱炭素

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