変化が必要な現在、社史は価値創造へ(中畑 陽一)

変化が必要な時代だからこそ過去に学ぶ

私が特に社史の重要性を感じるのは、統合報告やCSR報告といった企業がステークホルダー向けに発行する報告・活動との関わりです。

社史の編纂に携わると統合報告やCSR報告とは異なる様々な資料や、その企業の根幹に関わる情報に触れられる機会が多々あります。しかも、時間的な範囲は、統合報告での財務・非財務ハイライトで一般的な10年を遥かに超えた、創業時から現在までであり、その企業とステークホルダーとの関わりが、広く深く把握できることになります。

今後統合報告やCSR報告の前提として社史及びその資料を位置づけ、企業の価値創造やステークホルダーとの関わりを長い歴史のコンテキストの上で捉えなおし、昨今の環境変化への対応を加味して表現していくことがより重要になっていくと思われます。

従って、統合報告も社史との連携をすべきだと思いますし、CSR報告もGRIのガイドラインのみを教科書にするのではなく、まずは自社の社史を読み直すことで、自社の拠って立つものや、ステークホルダーとの長期的なかかわりや絆が見えてくるでしょう。

10年後なのか、30年後なのか、100年後なのか、その企業がどこまで遠くを見ているのかはそれぞれでしょうが、それだけ遠くを見たいのであれば、まずはそれに相当する過去を知り、学ぶことで、より未来が見通せるようになるのではないでしょうか。

新しい環境に対応する新しいやり方が必要となる時代です。だからこそ、過去を知ることが最初の一歩となるはずです。

これからの社史の価値

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中畑 陽一(オルタナ総研フェロー)

静岡県立大学国際関係学部在学時、イギリス留学で地域性・日常性の重要性に気づき、卒業後地元の飛騨高山でタウン誌編集や地域活性化活動等に従事。その後、デジタルハリウッド大学院に通う傍らNPO法人BeGood Cafeやgreenz.jpなどの活動に関わり、資本主義経済の課題を認識。上場企業向け情報開示支援専門の宝印刷株式会社でIR及びCSRディレクターを務め関東・東海地方中心に約70の企業の情報開示支援を行う。その後、中京地区での企業の価値創造の記録としての社史編集業務を経て、現在は太平洋工業株式会社経営企画部にてサステナビリティ経営を推進。中部SDGs推進センター・シニアプロデューサー。

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