新型コロナ、NGOが違法な野生生物取引の閉鎖訴え

WWF(世界自然保護基金)ジャパンは2月7日、世界的な流行になりつつある「新型コロナウィルス」の発生源に関連して、違法な野生生物市場の閉鎖を求める声明を発表した。

中国で取引されるカメの部分 ©TRAFFIC

全文は以下の通り。

新型コロナウイルス関連 アジア太平洋地域での違法な野生生物取引市場の閉鎖に関する WWF 声明
WWF は新型コロナウイルスの流行によって多くの命が失われている現実に深い悲しみを覚え、愛する人を亡くした家族や病気に苦しむ方々のことに思いを致しております。

現在の状況を考慮すれば、市場、レストラン、オンラインでの野生生物の販売を一時的に禁止にした中国 政府の決定は歓迎すべきものです。

野生動物の違法取引が動植物の個体数や世界の生物多様性に及ぼ す悪影響はよく知られていますが、野生生物取引の市場が人間の健康に及ぼしうる脅威はあまり知られていないように思われます。

現在の新型コロナウイルスの出現と拡散、また近年の SARS、MERS およびその他の同様の感染症の発 生によって、違法あるいは無規制な野生生物取引が人間の健康にもたらす潜在的な脅威に対し、緊急に行動を起こし、認識を広めることの必要性が明らかになっています。

違法な野生生物取引市場は、多くのアジア諸国、特に、中国国境近くのラオス、タイ、ミャンマーといった 国々が国境を接するメコン地域のゴールデントライアングルと呼ばれる場所でよく見られます。密猟者が野生動物の肉の需要に応えるために仕掛ける罠は、至る所で問題になっています。

その結果、アジアの熱帯林の多くで、地域固有の野生生物個体群が失われつつあります。

これには、取引が厳格に禁止されるべき、多くの絶滅危惧種が含まれています。

残念ながら、これらの違法な野生生物 市場の多くで、法執行は弱いか、そもそも無いに等しいことがよくあります。

これらの違法行為は野生生物を脅かすだけでなく、獣医学的見地に立った規制がないため、人々と家畜の両方の健康を脅かし、地域レベル、世界レベルの両方でコミュニティと経済に大きな影響を与える可能性があります。

コロナウイルスは人獣共通感染症を引き起こし、動物からヒトに感染する可能性があります。

コロナウイルスは、感染した動物と人が接触する場所において、変異することで種の壁を飛び越え、人間 に感染する可能性があります。

したがって、野生生物の取引市場は、このタイプのウイルスの変異による人 間への感染が起きやすくなる環境を与え、その結果は時に致命的なものとなります。

急速に成長する輸送 および観光セクターにより、感染した人の移動は激しく、地域での感染症の発生を世界的流行へと変えてしまう可能性があります。

「今回の公衆衛生の危機は、アジア太平洋地域にとって、違法あるいは無規制な野生生物市場を恒久的に閉鎖する機会が来たことの呼びかけとなるべきです」とWWFジャパンの事務局長(CEO)であり、アジア太平洋地域のWWFのCEOで構成される成長戦略会議(Asia Pacific Growth Strategy)の議長である筒井隆司は述べます。

また、「野生動物の肉目当て、また、薬用価値のあるものとして、あるいはペットにすることを目的とした野生動物の密猟や違法取引を恒久的に禁止しなければ、将来この種の感染症が流行する脅威 がこのまま残り続けることになるでしょう」と話しています。

WWF は、アジア太平洋地域の各国政府と緊密に協力して、国内および国際的な法制度をさらに強化し、無規制な野生生物市場の閉鎖を含む、違法な野生生物取引を撲滅するための働きかけを公衆衛生部門に対しておこなっていきます。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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