■「違法・無報告・無規制(IUU)」漁業」が増加
「昨年1年間で少なくとも800隻を超える中国漁船が北朝鮮の領海内でスルメイカ漁などを行っていた」―。こんな調査結果を、人工衛星データなどを使って世界の漁船の動きを追跡する民間団体「グローバル・フィッシング・ウオッチ(GFW)」と漁業にまつわる犯罪行為を追求する非政府組織(NGO)の「アウトロー・オーシャン・プロジェクト(OOP、本部・米国)」がまとめた。(共同通信編集委員/オルタナ論説委員・井田徹治)
北朝鮮領海内での外国漁船の操業は、漁業権を持つ北朝鮮の外貨収入源になるとして、2017年、核実験に対する国連の制裁措置で禁じられており、これに違反する可能性が高い。
スルメイカは日本や韓国にとっても極めて重要な漁業資源だが、過去5年ほどの間に漁獲量が急減し、2019年の日本の漁獲量は約4.2万トンと過去最低レベルに落ち込むなど減少が深刻。GFWの研究者は、北朝鮮領海内の乱獲が資源減少の一因になっていると指摘した。
GFWにはグーグルなどが協力、人工衛星のデータと人工知能(AI)を使い、世界の漁船の動きをほぼリアルタイムで追跡できる。通常は大型漁船に搭載が義務づけられている位置発信器のデータを手がかりにしているが、今回のように「違法・無報告・無規制(IUU)」漁業」に関与する漁船は発信器のスイッチを切ってしまうために追跡が難しい。
だが、今回、GFWは、イカ釣り漁船がイカを集めるために照明を使うことに注目、衛星画像から北朝鮮領海で操業する漁船を割り出すことに成功し、航路の追跡から中国漁船と確認した。
また、2隻の船が並んで航行しながら網を引く中国漁船に独特の「2そう引き」と呼ばれる漁船の存在と動きも確認。洋上では米NBCテレビと協力し、北朝鮮領海に向かう中国漁船10隻のビデオ撮影にも成功した。
■「他国領海内で操業する違法漁船としては最大規模」