熊本の保育園、支援物資の陳列で「第二の災害」防ぐ

■責任者不在でも機能する場所

出来上がったスペースは、その後も特に責任者を置いたりせず、自発的な運営で賄われているという。保育士の光永さんによれば「毎日夕方になると、保育園の保護者だけでなく、地元の被災した方たちが、『今日はなんばもらっていこーかー』と話しながら、2階に上がって袋いっぱいに詰め込んで持ち帰る毎日」と話す。

一方で、店のようにすべての物資が保管されているため、何が足りていて、何が不足しているかがひと目で分かることで、保育園に物資支援の連絡があった際、はっきりと(何が必要か)返答できているという。また、物資を補充にきた人は、入り口に設けられた仕分けステーションを使い、補充を自身で行うよう促す仕組みも作りあげた。

小学校2階に設けられた、仕分けステーション

それでも保育園の保護者の中で、各教室の運営がスムーズであり続けるよう、常に気をかけている人がいるという。しかしそれも、頼まれたわけではなく、あくまでも自発的な活動で行っているという。「ボランティアノート」を通じて、情報や問題点は共有され、参加者は自分でできることを考えて行動する。そういう自発的な活動だけで、このスペースは運営されている。

今回のボランティア活動の参加者の8割以上が女性だったと話す吉村さん。「水害のボランティアでは、『土砂のかき出し作業』といった男性に求められる力仕事のことが多く、一方で人のために役立ちたちと思っている女性たちがたくさんいる。今回多くの女性がここのボランティアで活躍してくれた」というように、実際女性たちの視点で整理され、仕分けされた支援物資は、3週間たった今でも整頓された状態が保たれているという。

今回のボランティア活動を通じて、「水害支援の場に、力仕事だけではないボランティアニーズと役割が存在することが分かっただけでも、今後の災害対応に大きな学びがあった」と話す吉村さん。

「子どもたちのために、という人類共通の思いがこれだけの人をこの場に集めたのではないか」と続ける。広い旧小学校を利用して、「瞑想スペース」を運営するといったメンタル面での支援活動も計画していたというが、新型コロナの影響で思うような活動が行えていないのが現状だ。それでも、光永さんは「私たち保育園の保育士だけでは、絶対できなかったこと。吉村さんはじめ、ボランティアさんたちが自分で考え作り出してくださった空間。これからもありがたく大事に使わせてもらう」と話す。

現在も、川岳保育園の再建については見通しが立たず、引き続き当面この旧小学校への運営を余儀なくされるという。それでも、51名の園児と、教職員22名は皆無事で、この場を通じて地域コミュニティと協力しながら前進している。

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