世代交代に悩む高齢のNPO代表

さて、イベントの様子であるが、昨年5月に創業者の山岸秀雄前代表から現在の松本祐一代表にバトンタッチしたNPOサポートセンターの両氏が登場して「譲る側と受け継ぐ側の気持ち」というテーマの下、率直に語り合った。内閣府の調査結果については、山岸氏、松本氏とも予想通りと受け止めており、山岸氏は「NPOは常に原点に戻ることが大切だ。NPOを引き継ぐ人はどういう覚悟と信念を持っているかが問われる」と指摘。松本氏は「NPOは個人のものではなく公共の器。代表は社会のニーズにどう応えるかを意識すべきで、個人の色を出す必要はない」と自らの経験をもとにNPOの役割と事業承継の意味を強調した。

両氏は、コロナ禍の今はモデルチェンジのチャンスであり世代交代をやりやすい時であることや、前例が少ない合併についても、事務局をシェアード・センターとして一体化したり事務所スペースの共同利用なども検討に値するとの考えを持っているようだった。

中小企業経営者に対する事業承継支援のパイオニアである一般社団法人事業承継協会の内藤博代表の話は示唆に富むものであった。「社長にも賞味期限があり、頑張っても60~72歳が限界」とし、「それ以上長くやると、業績は年齢とリンクしており売り上げが落ちる。定年制のないNPOでは周囲からの圧力もなく、慢心して危ない人になりやすい。裸の王様にならないためには、辞め時を決めておいて、惜しまれるうちにきっぱりやめるのがよい。天皇も自分で退任を決めた」とアドバイスを送った。

また2代目代表としてカリスマ性のあった富永一夫初代代表から事業を引き継いだ地域づくりNPOフュージョン長池の田所喬代表は「前代表はもともと適材適所で仕事を人に任せるタイプだった」と前置きしたうえで、「組織のための個人ではなく、個人のための組織だよ。個人のためになることならあなたのやり方で組織を変えていいと言われた。前代表と同じやり方を踏襲するように指示されたら辛かったが、おかげでうまく行った」と体験を明かした。理念は守りながらも、やり方は変えていくというのがポイントかもしれない。

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原田 勝広(オルタナ論説委員)

日本経済新聞記者・編集委員として活躍。大企業の不正をスクープし、企業の社会的責任の重要性を訴えたことで日本新聞協会賞を受賞。サンパウロ特派員、ニューヨーク駐在を経て明治学院大学教授に就任。専門は国連、 ESG・SDGs論。NPO・NGO論。現在、湘南医療大学で教鞭をとる。著書は『国連機関でグローバルに生きる』など多数。執筆記事一覧

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