「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」

それは1枚の絵画から始まります。大学を卒業し、伊勢丹に入社してから19年。その後、エムズシステムを創業して20年。今年でいままで一番長かった伊勢丹でのバイヤーというキャリアを越えて波動スピーカーを開発、製造、販売することの方が長くなります。

ポール・ゴーギャン「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」 (1897)

この39年間、ほとんど一度も思い出すことなく、深く心の片隅に沈殿していたあることが浮かんできました。

今年の初め、経営理念とビジョンを明確にしようと考え始めたときに、この長い題名の付いた(絵の左上にその題名が描かれている)、縦139cm、長さ375cmの画家ゴーギャンの大作を思い出したのです。

彼の代表作でもあるこのタヒチの絵は、絵そのものと共に、その極めて哲学的なタイトルでも有名です。

「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」

あまりにも直截的ですし、あまりにも本質的な疑問形です。それが私の卒業論文のテーマでもありました。

雨の日の雨宿り。一人の男と女の子が赤い布の庇の下で雨宿りをしています。男はギャラリーらしき店の中に飾られている絵を眺め、少女は通り側を向いて、少し恨めしそうに上目使いで空を見ています。雨は止みそうになく、女の子はくるっと振り返り、店の中にある絵を眺めました。

それはゴーギャンのあのタヒチの絵の複製です。しかもかなり縮小されているので、プリントの複製でしょう。女の子が呟きました。
「ヘンな絵!」

確かに変な絵だと思います。色調も構成もヘンです。男も思わず同意してしまいました。

「たしかにヘンな絵だね」

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