遊び場が街を繋げ、子どもの未来創る

こども∞感ぱにーでは、スタッフの話し合いの場を特に大切にしていると田中代表(前列中央)は話す

――スタッフとともに活動を運営・継続していくなかで、どんな点を重視していますか。

活動の振り返りを大事にしています。スタッフ自身の当事者性は、やっぱり生の声を聞かないと生まれてこない。どんどん現場に出て自分の肌で感じて、子どもの声を聞いて、時には子どもに腹を立てて、時には無視されて、いっぱい悩んでこそ自分の立ち位置が見えてくるんじゃないかと思っています。

フリースクールのメンバーで食卓を囲む

悩みがあったら共有し「●●だったらどうしてた?」と相談すること。スタッフ自身が自分の失敗や悩みをアウトプットできるよう組織の壁をなくし、みんなが同じ認識のなかで、同じ方向を向いていくために、話し合いの場を何より大事にしています。

事業について話し合うスタッフたち

そうした日々の活動を続ける中で、2019年度はプレーパークに延べ5200人の子どもと大人も延べ3000人訪れました。

点から面へ、課題解決に向けた連携

――活動は8年目を迎え、今どのようなことに力を入れていますか。

目の前の子どもやお母さん、地域のために活動を続けてきたのですが、その中で子どもの遊び場や居場所が本当に少ないという課題が見えてきました。例えば人口1.5~2万人に1つあるべき公設児童館が、人口15万人の石巻市には1つしかありません。

教育のあり方についても、2017年に教育機会確保法が改正され、社会的自立に向けて一人ひとりの子どもを尊重した多様な学びの場の必要性がうたわれています。不登校への施策やフリースクールの推進を含めて変えていくためには、学校をはじめPTAや民生委員、社会福祉協議会やNPOなど地域での多様な連携が不可欠です。

――そうした多様な主体をつなぐ役割が重要ですね。

ネットワークを組まないと解決できない課題ばかり。私たちの活動は全国で見れば点でしかありませんが、目指す課題ごとに色々な団体とネットワークをつくり、任意団体を立ち上げて発信しています。

2017年には子どもの居場所を増やす連携づくりのための「石巻のプレーパークと子どもの遊びを考える会(石の会)」を立ち上げました。そのきっかけは、子どもたちの声でした。

自治体が子どもの要望を聞くために主催したイベントのなかで、子どもたち自身が「自分の住んでいる地域にもプレーパークが欲しい」「自分たちでデザインした公園が欲しい」という声を自治体の担当者に直接伝えたのですが、「今の状況では難しい」という回答でした。

石巻のプレーパークと子どもの遊びを考える会

「子どもたちが声をあげたんだから、次は大人の出番」と、その場にいた支援団体が結集して設立。「石巻市内、1中学校区に1つの『子どもの居場所』をつくる」をミッションに、住民のニーズ調査や市議会議員と住民との座談会、移動式プレーパークの実施など、活動を広げています。

――政策面を変えていくためにも、連携は重要ですね

子どもの声の代弁者であり続けることが、私たちの活動のミッションの一つです。ネットワークを組むと楽しいですね。色んな経験者が集まって一つの団体を立ち上げるのは時間もかかるし大変ですが、本当にその団体の目指すビジョンやミッションが固まったとき、すごい力を発揮します。

多様な学びを共につくる・みやぎネットワーク

「石の会」をはじめ、不登校やフリースクールに関する「多様な学びを共につくる・みやぎネットワーク」、地域のなかで子どもを見守り育てるための「渡中学校区WWI(わっしょい渡波委員会)」などの任意団体を立ち上げて、継続的に活動を進めています。

子どもに必要な活動が継続する仕組みを

――東日本大震災の復興予算も期限を迎える中で、運営費は多くのNPOで共通の課題になっています。

運営資金は大きな課題です。私たちの活動でいえば、子どもからお金を取ることはできません。全国で遊び場や居場所づくりの活動を行っている団体やプレーワーカーも同じ悩みを抱えています。

例えば、児童館など、日常的な子どもの居場所を増やすことや、不登校の子どもにとっての居場所の必要性など、官民が連携して考え取り組んでいくことが求められていると感じています。

会員向けに定期発行する「だん子むし通信」では、活動の現場の様子が生き生きと伝えられている

また、私たちの団体では、一緒に活動してくれる仲間や会員を増やし、クラウドファンディングや企業協賛を募ることに力を入れていきたいと考えています。

信頼性を伝えるためのグッドガバナンス認証の取得や、認定NPO法人化も重要な一歩です。またお金には換算できませんが、公園の遊具づくりの大工仕事や広報のお手伝い、子どもと一緒に遊んでくれることなど、ボランティアの支援も大切にしていきたいと考えています。

グッドガバナンス認証:

一般財団法人非営利組織評価センター(JCNE)が、第三者機関の立場からNPOなど非営利組織の信頼性を形に表した組織評価を実施し、認証を行っている。信頼性を示す指標として、「自立」と「自律」の力が備わっているNPO であること、すなわち「グッドなガバナンス」を維持している組織を認証し、組織の信頼性を担保する。信頼性を見える化することにより、NPO が幅広い支援を継続的に獲得できるよう手助けをする仕組みだ。詳しくはこちらへ。

非営利組織評価センターが製作したインタビュー動画
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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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