クロマグロ漁獲枠 小幅削減で様子見

大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)は、11月27日までパリで開催された年次会合で、大西洋クロマグロの資源保存管理の枠組みを決めた。東大西洋のクロマグロの漁獲枠は4%の小幅削減となり、複数の国際NGOが求めていた大幅な削減は実現しなかった。

高値で取り引きされるマグロ資源は、海域ごとに設置された国際漁業管理機関が管理している。地中海を含む大西洋のクロマグロを管理するICCATは、この海域のクロマグロを、繁殖地の違いで東西に分けている。東の資源量は西に比べて多いが、保護対策が遅れていた。

そこでICCATは2009年の会合で、東大西洋のクロマグロの2010年の漁獲枠を前年比40%減の1万3500トンとした。しかし、今回の会合で決めた2011年の漁獲枠は1万2900トンと前年比でわずか4%減にとどまった。

農林水産省は会合閉幕後「科学委員会の助言に従った漁獲可能量の設定、我が国からの提案に沿った遵守確保強化策等が決定されたところであり、次世代に向けた大西洋クロマグロの持続的利用確保の観点から評価しうるものと考えている」との声明を発表した。

今回日本は漁獲枠削減も受け入れる構えで、規定遵守の徹底を積極的に求めるなど、マグロ資源の保存に前向きな姿勢を示した。その結果ICCATは、加盟国に漁の計画書提出を義務付け、内容によっては操業を認めないといったルールも設けた。

しかし今回の会合に先立ち、WWFやグリーンピースはクロマグロ種の保存のために、漁獲枠の大幅削減と産卵域での禁漁、あるいは全面禁漁を求めており、今回の結果はその要望を満たす内容ではない。

大西洋のクロマグロは今年3月、絶滅の恐れのある野生動植物の貿易を決める「ワシントン条約(CITES)」の締約国会議でも議題に上った。ところが、国際商業取引の原則禁止を求めたモナコ提案に日本を含む各国が反対し、否決されている。

今回の決定は、漁獲枠の削減は最小限に抑え、国際ルールを守らない漁に対する規制を強化して資源の維持を図る内容だ。これが大西洋クロマグロの資源量の推移にどのような影響を与えるのかが注視される。(オルタナ編集部=瀬戸内千代)2010年11月29日

水産庁 プレスリリース

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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